泣ける映画という前評判は聞いていましたが、まさか自分がこんなに泣くとは思いませんでした。最初はぐっと堪えていたのですが、会場の至る所から、鼻をすする音が。つられて、ポロリと涙を流したら、あとは自然体で、いろんな所で、涙がポロリ。
宮沢りえさん演じる「余命二ヶ月」の幸野双葉。ああ例のごとく「余命物か」と思う方も多いと思うけれど、驚くほど、淡々と描かれていき、最初、拍子抜けするほど。
なのに見ているうちに、どんどん体の中に染みこんできて、涙として、溢れ出します。死と向き合うんだけど、涙を流すたびに前向きになれる映画です。
「湯を沸かすほどの熱い愛」このタイトルを頭に入れて、観ましょう。本当におすすめの映画です。
池袋のシネマサンシャインは、11月25日(金)終了なので、ぜひ、時間があれば、見て欲しい映画です。
話はかわりますが、父の話をしたいと思います。
80を過ぎてから、自分の終わり方を考えていたようで、まだ元気なうちに、いろいろと「終活」をしていました。
葬儀場の会員になり、葬儀にかかるお金を積み立てていました。自分が死んだら、実家には誰も戻らないだろうから、売りやすいようにと、自分で造った庭を更地にし、家の補修などもしていました。家族全員を集めて、死後、揉めないように取り決めを伝えました。
その後、元気に暮らしていたのですが、おととしの冬に心不全を起こし、入院。高齢でしたから、回復の見込みはなかったのですが、延命の為の、入院生活が始まりました。
本人は、「もういいから、家で死にたい」を繰り返しまたが、家族は「そうだね」と言うことも出来ず、「誕生日までは、頑張ろうよ」と、言うしかありませんでした。
本人は、死を悟っているので、見舞いに訪れると、懐かしい話ばかりをしたがりました。あれが楽しかった、あれが旨かったと。
そして、「もう一度旨い酒が飲みたい」と繰り返しました。酒が無理なら、コーラが飲みたいとも言いましたが、糖尿病も併発していたので、病院から堅く禁じられていました。
そんな入院生活を送りながら迎えた桜の季節。父親の誕生日を迎えました。午前中に、看護師さんたちに誕生日を祝ってもらっていました。ところが、午後になって容体が急変し、危篤状態に。家族全員が駆けつけるのを待って、静かに息を引き取りました。
「約束通り、誕生日まで頑張ったから、もういいだろ」そんな父の声が聞こえるようでした。
その後、弟と二人で話しました。「あのとき、先生に叱られても、一口お酒を飲ますべきだったのかなあ」人生の終わり方について、いろいろと考えさせられました。
映画の中で宮沢りえさんが、延命の為だけの入院生活はしたくない。自分らしく死にたい。というような事をいうのですが、ふと、父の事を思い出しました。