ツールドフランス2016 第12ステージ

見ている物を驚かせたツールドフランス2016、第12ステージ。
衝撃のラストが待っていました。

自転車レースの世界最高峰にもかかわらず、
王者が自転車に乗らず、自分の足で走っている姿が映し出されたのです。

本来であればこの日は、プロヴァンスの超級山岳、
モン・ヴァントゥの山頂ゴールだったのです。
ところが、天候が崩れ、風速100km以上の突風が吹くだろとの予報で、
選手だけでなく、観客の安全も考慮して、
山頂から6km手前にフィニッシュラインは下げられたのです。

本来であればゴール付近は、安全の為フェンスが設けられるのですが、
突如のゴール変更の為、フェンス無し。
つめかけた観客が沿道に溢れ、間近の選手を観て興奮し、
飛び出したりした事で、道をふさいでしまったのです。

そして、それにぶつからないように前を行くカメラバイクが急停止。
そのバイクに選手達が、おかまを掘るようにぶつかってしまったのです。

さらに後続のカメラバイクが、フルームの自転車に乗り上げ、破損。
山の中ではスペアのロードバイクを積んだサポートカーも来ず、
たまらず、フルームは自分の足で走り出してしまったのでした。

この日、優勝したのは、ロット・ソウダルのトーマス・デヘント。
しかも、ステージ優勝、山岳賞、敢闘賞という三冠を同時に獲る偉業を達したのに、
世間の話題も、テレビ中継もフルームの事ばかり。
すっかり影が薄くなってしまったのです。

しかも、フルームの一件がなければ
(フルームが悪い訳ではありません)
デヘントの優勝には、ほっこりとしたいい話しがついて終わるハズでした。

この日、デヘントと一緒に逃げ集団にいたのは、
チームメイトで、平坦コースのエーススプリンター、アンドレ・グライペル。

本来、この日のような超級山岳コースの場合、
スプリンターは山に弱いので、最後方グループのグルペットを走るのが常。
それがなぜか、先頭の逃げ集団を自ら引いていたのです。

グライペルのあだ名は、筋肉質でムキムキな事から「ゴリラ」と呼ばれています。

でも、その名前は本人もお気に入りで、自分のバイクにゴリラのペイントが。

海外のファンも、グライペルの名前で、こんな動画をUP!

そのゴリラ…もとい、グライペルが、
山岳コースで最後の登りが始まった途端にアタック!
逃げ集団からも飛び出して行ったのです。

平地専門のゴリラが、山でアタックをかけたものだから、
実況も「ゴリラががマウンテンゴリラに!」と興奮!

このアタックで、ツイッターは、グライペル祭り!
ついに、トレンドにも入ってしまいました。

一見奇妙に見える、この一連の動き。
でも、それは全て、チームメイトの為だったのです。

グライペルのアシストを受けて見事優勝したデヘントは、
優勝コメントで、グライペルの働きへの感謝を述べています。

登れないハズのスプリンターが、自らアシストとなって、山を登る。

アニメ「弱虫ペダル」の15話で、
スプリンターの鳴子章吉が、クライマーを引くために見せた必殺技
「デーハーどやどやクライム」

そんなマンガみたいな事が、本当に起きたのです。

本日の影の主役、アンドレ・グライペルは、
2018年までチームとの契約を延長しました。
その条件の中には、こんなものが含まれていました。

そして、いつも自分に尽くしてくれるアシストの為に、
今度は自分が献身的にアシストにまわる。
グライペル、マジでいいヤツ!

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