芥川賞作家・長嶋有の同名小説を竹内結子主演で映画化。
80年代初頭を背景に、小学4年生の少女・薫と、
自転車に乗って突然やって来た父親の愛人・ヨーコが過ごす刺激的なひと夏を
ノスタルジックに綴る。
家出した母親の代わりに御飯を作る為、父親に頼まれてヨーコさんがやってくる。
自転車に乗って。
「この自転車高いんだ!ドイツ製」
というのは、緑色のクロモリフレームのドロップハンドル。
革ジャン着てバイクにまたがらなくても、
歌舞伎町のキャバレーで働かなくても、
竹内結子さん演じるヨーコさんが、ドロップハンドルの自転車に乗っているだけで、
十分ハードボイルドに見える。
そしてこれがこの映画のキモだったりします。
ストーリー自体はそんなに起伏のない、どこかにありそうな話。
最近、この手の映画が好きでよく見るのだけど、
自分でもなぜ好きなのかはわかりませんでした。
でも、この映画を見て、わかったのです。
歯が溶けると母親に禁止されているコーラ。
その話をすると、ヨーコさんは鼻でわらい「飲んでみな」と缶を渡す。
そんな風に、母親がいなくなってから、親に禁止されていた事が次々と解禁となる。
無理と思っていた事を「やってみなって」と背中を押される。
普通の生活の中に潜む、小さな冒険が次々と生まれるのです。
大人になった今…
「ラーメン屋に一人で入るのなんて無理」
「個人経営の喫茶店なんてわけわかんないから、スタバがいい」
そういう人に、ヨーコさんならきっと笑いながらこういうだろう
「入ってみなって!美味しいぞー」
「リア充」なんて言葉が生まれるのは、
リアルが充実していない人が、山ほどいるからだ。
ここの所、こういう映画が多く作られるのも、
買い食いだの、日常の中の小さな冒険でさえした事がない人が多いから、
そんな小さなイケナイコトが、人をドキドキさせるからだろう。
それまで自転車に乗れなかった少女に、ヨーコさんが言う。
「自転車乗れるようになると世界かわるよ〜大袈裟じゃなくてホントだから」
今でこそ、ドロップハンドルやクロスバイクに乗るチャリガールは普通にいます。
でも、でもこの映画の世界である30年前には、そんな女性はほとんどいなかったハズ。
だから、ドロップの自転車に乗って颯爽とあらわれるヨーコさんは、
とても、カッコいいのです。
そして、ヨーコさんのセリフをまねてこう言おう。
「ロードやクロスに乗れるようになると世界かわるよ〜大袈裟じゃなくてホントだから」