純喫茶磯辺

地元、江古田の喫茶店「ぶな」は、本棚に色んな本が並んでいるのですが、
それに混じって、マスターがコーヒー関連の新聞記事を集めた
スクラップブックも並んでいます。
そこで見つけたのが、この「純喫茶磯辺」のレビュー。

名前とパッケージはレンタルビデオ店で見ていたのですが、
いかにもB級っぽいパッケージと、
ダメオヤジが思いつきで喫茶店をはじめ、そこに不器用な人間が集まる
…というエピソードが、よくあるバグダットカフェ焼き直し作品のようで、
どうも食指が伸びませんでした。

ところが、そのレビューでは、あの「深夜特急」の沢木耕太郎さんが、
この映画を絶賛していたのです。
これはあの「シェーン」の流れを汲む映画だとまで言い切っています。

「ホントかあ?」
と思いつつ、無性に見たくなり喫茶店の帰りにすぐさまレンタル。
そして見始めました。

最初は「やっぱりB級な映画じゃん」と少しガッカリしていたのですが、
見ているウチに、だんだん面白くなって来ました。

まず、仲里依紗ちゃんの女子高生役が非常にリアル。
ドラマに出てくる女子高生というよりは、
団地に住み、ちょっと疲れた生活感というか、少し貧乏くさい匂いまでする女の子で
演じているというより、なんかそのまんまこういうコいるよなという感じなのです。
最近の彼女は、特殊な役が多かったから、そう思えたのかもしれませんが。

宮迫博之さん演じるお父さんや、バイトのウエイトレスを演じる麻生久美子さんなど、
他の出演者は、マンガ並にデフォルメされていてるのですが、
仲里依紗ちゃん演じるリアルな女子高との対比が効果的で、
より他のキャラクターの変な色を強くしています。
この手法、ちょっと勉強になりました。

変なキャラ達は、デフォルメされているけど、
これをリアルに戻したら「いる!いる!」というキャラ。

カフェめぐりをしていても、あんな人達には、お目にかからないですけれど、
お酒を飲みに行くと、麻生久美子さん演じるイラっとくる女性や、
喫茶店に集まる、人との距離感のわからないお客さん達などは、リアルに見かけます。
酔っぱらって、隠していたその人のキャラがデフォルメされているからなんでしょうね。
それを劇中では、マンガチックに描いていて、そのB級具合がいい味に。
まあ実際の江古田の飲み屋には、この映画の登場人物達が薄くなるぐらいの
強烈な濃いキャラが沢山いるのだけど、それを見てるからリアルと感じる事が出来たのかも。

実はストーリーも、宝くじが当たって喫茶店を始めた人の実話をヒントに作ったもの。
憧れだけでカフェをはじめてしまう人に置き換えると、さらにわかりやすいかも。

だから、全体的にマンガチックでありながら、どこかリアル。
ストーリー自体は大きなドラマがある訳でも、
最後にどんでん返しがある訳でもないのだけど、
ジワジワと面白さがこみ上げ来ました。

あと個人的には、途中喫茶店をオープンさせる時に現れた看板屋さんが
自分の知り合いで、笑った。

ロケ地となったのは、小田急線の和泉多摩川の商店街なので、
川沿いのシーンは多摩川ってブログに書いている人が多いのですが、
あちこちサイクリングしている自分としては見逃しませんでした。
宮迫さんが自転車に乗っているシーンは、荒川サイクリングロードです!
こうして自分の目で見ていると、一瞬でもパっとわかるものなんですね。
…というか、あのサイクリングロードを走った事のある人なら、すぐわかります。

最初は期待してなかったんだけど、
いろんな要素が積み重なって、最終的には好きな1本となったこの作品。
あまり何も考えずに、お酒でも飲みながらボーっと見て欲しい映画です。

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バグダッドカフェ

カフェが舞台の映画とういうと、真っ先に思い浮かぶ作品。
テーマソングの「コーリング・ユー」と共に大ヒットした作品で、名作だと思うのですが、
今、観ようとしても、これがなかなかレンタルビデオに置いてません。

というか今の時代ビデオではなく、レンタルDVDなのだけど、
こちらに置き換わる時に、古い映画は、ある程度切り捨てられてしまったのでしょうか?
自分の住んでいる町の周辺5店舗をまわったけど、どこにも置いてありませんでした。
TSUTAYAの池袋店までも行ってみましたが、そこにもなし。

唯一、近所のマニアック作品を扱っているお店にVHSでありました。
久々に本当の意味のレンタルビデオをしました。
ビデオデッキ断捨離しなくて良かった~。

作品はというと…

そこは日々の生活に疲れきったモーテルの女主人や、日夜遊びに明け暮れる娘、
売れない画家、ピアノの弾けないピアニストなど、うだつのあがらない人々が集うカフェ。
そこへやってきたのがドイツ人のジャスミン。
彼女の出現は、徐々に周りを変えていく…。

ゆっくりと時が流れ、台詞もモーテルの女主人がまくし立てる以外は、ほとんどない。
だけど、いろんな比喩で、人々の心がほぐれている様子をじっくりと表現していきます。
とってもとっても好きな映画です。
今で言う断捨離することで、気持ちをリセットする様子ととか、
心を開いていく様子を、絵のモデルのポーズで表現したり、
人の和とブーメランの軌道とか。

でも、これって現代に通用するのかなあ?

カフェめぐりをしていても
「お店が狭いのでバギーカーの入店はご遠慮いたします」とか
「皆さんにくつろいで頂く為に、お子さんがぐずった場合は外であやしていただくように…」
など、最近は、但し書きの貼られたお店が増えています。
書いてないと、周りを気遣えないんだって。

ラーメン屋さんに至っては、
「お一人様、一品のご注文をお願いします」
という注意書きのお店が増えています。

なんとか増し増しという大盛りラーメンを二人で一つ食べて、
安くあげようと言う若いカップルが多いのだそうです。
「一人一品お願いします」というと、
「どこにもそんな事書いてないじゃないか」と逆ギレするんだとか。

団体で来て「弁当持ってきてるので注文はいいです」という学生もいるそうで、
いつから日本人は書いてないと、わからない人種になってしまったのでしょう。
以心伝心とか、完全に死語ですね。

話はそれましたが、直接的でなければ、なんだかわからないという人には、
全くもって、お勧め出来ない作品。
単純明快なアクションや、ハンカチを持ってご覧下さい的ラブストリーをお勧めします。

絵を見るのが好きだったり、アート好きだったり、
比喩表現を読み取るのが好きな人には、たまらなく面白い作品です。
遠赤外線のように、じんわりじんわり来て、優しくなれる映画だと思います。

そこに漂う空気感を読む映画。
KYならぬKT、空気楽しみましょう。

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