カフェ・カヤ(要町)

アトリエ村

西武池袋線の東長崎付近に、アトリエ村という特別養護老人ホームがあります。
戦前、池袋からこの付近には画家や音楽家などが集まるアトリエ村があり、
それにちなんだ名前です。

この付近は、当時、芸術家が集まったパリのモンパルナスになぞられて
「池袋モンパルナス」とも呼ばれたりしていました。
その中でも一番大きなアトリエ村が「さくらヶ丘パルテノン」。
この付近には、およそ70軒ものアトリエが建設され、多くの芸術家が移り住み
一大芸術村を形成していたのです。
戦災と徴兵により、アトリエ村は消滅してしまうのですが、
今回は、自転車でその名残りを探す旅に出かける事にしました。

自転車でのカフェめぐりを趣味にしたハズなのに、
その途中にある町の歴史だの建物だの、芸術だの、
いろんな物にひっかかって、あいかわず迷走中です。

不動湯

さくらヶ丘パルテノンは、銭湯の不動湯の裏手あたりにあったらしい。
それを手がかりにする事にしました。
(これは以前撮った写真)

不動湯跡

あそこなら、かつて一度行った事があるので、すぐに銭湯の煙突がみえるハズと
探してみたれけど、なかなか見つかりません。
銭湯が廃業して、マンションに建て替えられていたのです。
残っていた「お不動様」を手がかりに場所を特定しました。

模型写真

続いての手がかりは、豊島区立郷土資料館にあるアトリエ村を再現したというジオラマ。
その写真が区のホームページに掲載されていたので、iphoneに転送して、
刑事ドラマで写真を手がかりに聞き込みするみたいに、
建物を見比べながら、周辺を探索しました。

アトリエ

この付近、ほとんどの建物が建て替えられているのですが、
路地の奥に唯一、平屋の建物が。
ジオラマの写真では、屋根が二段階の傾斜になっていますが、この建物もそう。
大きさからしても、ほぼ間違いないと思うんですが、どうなんでしょう?

ちなみに、当日、この隣の木造アパートが解体されていました。
この建物は残ってくれるといいのですが。

看板

路地を抜けると、民家の壁に「さくらが丘パルテノン」のみちしるべが。
たぶん、あそこで間違いないハズ。

桜の木

「さくらが丘パルテノン」の名前の由来となった桜が、
この家の角にあるとされているのですが、
その桜も枯れてしまい、今はご覧の通り。
少しずつ、芸術の香りが風化していました。

額縁屋

でも町を散策すると、何でもない住宅地に、ポツンと額縁と画材のお店があったりして、
アトリエ村があった名残りなんだろうなあ…という気分に。

熊谷守一美術館

「さくらが丘パルテノン」から、少し離れたところに、
「つつじヶ丘パルテノン」がありました。
こちらは、つつじの木が植えられていたアトリエ村で、
そこに住んでいたのが画家の「熊谷守一」。

入り口

現在、その住居跡が熊谷守一美術館となっています。

カフェ・カヤ

その1階というか半地下が、「cafe kaya」。

店内

熊谷守一さんの次女であり、画家である熊谷榧さんのギャラリーもかねていて、
榧さんの絵や森岡成好さんの陶芸作品などが展示されています。

カフェオレ

カフェオレは400円。
ギャラリーなので写真はダメかと思ったのですが、
念の為に聞いてみるとOKを頂きました。

カップも榧さんの陶芸作品。
手びねりでしょうか?
凸凹から手のぬくもりを感じられるような作品です。

お店で働かれている女性は、お孫さんなんでしょうか?
カウンターでお客さん達とアート談義をしていました。

それにしても素敵な空間です。
窓から差し込む光が、作品群に陰影をつけ立体像にさらなる力を与えています。
住宅街の中の超穴場カフェ。
ここを教えてくれたのは、前には
目白の花想容
落合のカフェ傳
なども教えてくれた人で、今回で3軒目。
やはり、嗅覚を持っている人は、持っているんですね。

■cafe kaya(熊谷守一美術館)
■東京都豊島区千早2-27-6
■営業:10:30~17:30
■休館日:月
■美術館入場料:大人500円
(cafeのみは入場無料)
場所はこのへん
熊谷守一美術館オフィシャルサイト

アリ

人は自分を変える事を怖がります。
自分の築いてきたやり方を変えることも怖がります。

そんな時は美術館を訪れてみるといいと思います。

優れた美術品は、自分の価値観を壊すようなパワーで向かって来て、
そして気持ちよく、自分の小さな価値観を両断してくれます。

美術館は、パワースポットなんじゃないかと思う。
日本刀や切れ味の良さそうな刃物を目の前にすると、
張り詰めたような空気を感じますが、
展示された作品群からもそんなオーラを感じる事が出来るのです。

本来のパワースポットって、スピリチュアルなものよりも、
価値観を与えてくれるような場所の事を言っていたような気がします。
霊山と呼ばれる所も、霊が宿っている所というよりは、
そこでの修行を乗り越える事で、次への自信とパワーをつけてくれる場所のハズ。

そういう意味で美術館は、多くの作品を描く事で得た悟りのような物が、
パワーとなった降り注いで来ます。
特に池袋モンパルナスの仙人と呼ばれた熊谷守一さんの作品は、
余分な物をそぎ落とした、潔さを与えてくれます。
何かに迷いが生じたら、また美術館を訪れてみたいと思います。

Pocket
LINEで送る

アメリ

自転車が舞台の映画に続いて、
カフェが舞台と鳴っている映画も取り上げてみたいと思います。

原題は「Le Fabuleux Destin d’Amélie Poulain」で
「アメリ・プーランの素晴らしい運命」という意味。
監督は、ジャン=ピエール・ジュネ。
パリのモンマルトルのカフェを舞台にしたフランス映画です。

きっとこの映画が嫌いなタイプな人
船が沈んだり、隕石が落ちてきたり、テロ組織が核兵器を奪ったり、
ど派手な映画が好きな人。
勝間和代を信奉している人。
昔、学級委員だったり、PTAの役員で規則を守らせる側の人。

きっとこの映画が好きになる人
森見登美彦の「夜は短し歩けよ乙女」にワクワクした人。
「かもめ食堂」にクスリとした人。
「バグダットカフェ」にジーンと来た人。
クレラップのCMの女の子が可愛いと思う人。

小さなドラマが好きな人には、とてつもなく面白い作品。
映画でありながらナレーションベースで進められていき、
小説を読んでいるような感覚にさせられる映画です。

見た瞬間というか導入部分ですぐに頭に浮かんだのがこの作品です。

ブラックユーモアが随所に散りばめられているので、
素直すぎる人が観たら、ただの悪ふざけにしか見えないかもしれません。
が、妄想癖のある人が観たら、それを実現したらこうなるという
人間の闇の部分も面白く描いている事がわかると思います。
脳内にある物を描いたらこうなった…という感じ。
スターウォーズの正義とダークサイドみたいな大きなもんじゃなく、
小市民的な「あるあるネタ」の闇です。
ハッピーエンドだってホントは妄想かもしれないし。

ところで、アメリの舞台となっているのは、
パリのモンマルトルにあるカフェ「カフェ・ドゥ・ムーラン」。
ココに集まる、ちょっとダメな人、ちょっと変な人が交差するお話。
主人公のアメリもトラウマを抱えてストレートに自己表現出来ないのだけど、
人と交わる事で、少しずつ心の殻をやぶっていきます。

検索してみると、パリ旅行のついでに聖地巡礼みたいにして、
このカフェを訪れたアメリ好きの人達のブログが数多くヒットします。

日本でカフェが舞台の映画やドラマって何なんでしょうね。
その昔は、常連が集まる喫茶店が舞台という物語ありましたが、
今は距離感が欲しくて喫茶店よりカフェに行くわけだから、
物語としてはリアリティーが少ないのかな。
それとも、直接はふれあわないけど、
かすりながら生まれている物ってあるのかな?

Pocket
LINEで送る