忌野清志郎は、何故自転車に夢中になったのか?
それを調べてみたいと思いました。
担当している番組に、その曲が生まれた背景を探るコーナーがあるのですが、
誰の何の曲にしようか、色々考えているうちに、
キヨシローって何で自転車にハマったんだろう?
自転車にハマってからの曲、サイクリングブルースは、
どうして生まれたんだろう?と思うように。
そこで、忌野清志郎のサイクリングブルースという本を買って読んでみました。
結論から言うと、自転車を始めたのは、娘さんが生まれた事がきっかけ。
子供が生まれてから、父親という物を意識するように。
そして、自分は子供を守ろる体力を持っているのか?
そう思わせるニュースと出会います。
2000年の12月
山形県立川町で発生した雪崩事故で、雪崩で生き埋めになった4人のうち、
ただ一人助かった建設会社員疋田武雄さん(52)を発見し、救出したのは、
80歳になる父親、虎(たけし)さんでした。
雪崩に息子が巻き込まれたという一報を聞き、
かんじきとスコップを持って、激しい雪の中を現場へ。
吹雪で前がよく見えず、積雪も腰くらいまであるなか、
3時間かけて約10キロの雪道を歩き、
雪に埋もれていた息子を見つけ、掘り起こしたのです。
このニュース、僕も扱ったので、よく覚えています。
その人間の秘めたる能力というものに、キヨシローはは大いに衝撃を受けました。
そしてわが身を振り返ります。
「自分にはそんなに歩く能力が備わっているだろうか?」と。
そこでまず、「鹿児島まで歩いて辿りつこう!」ということをひらめきます。
しかし、きっと疲れたら交通機関をアテにしてしまうに違いないと思い直す。
「ならば自転車ならどうだろう?」
これが自転車に目覚めたきっかけでした。
鹿児島へのツーリングは具体的な目標となり、
自転車の先輩に話を聞きに行く。
「鹿児島までいけると思う?」と尋ねるキヨシローに、
帰って来た答えは「LSDで行けば大丈夫」
Long Slow Distance
すなわち長い距離をゆっくり行くこと。
そして、キヨシロー会長とする、チームLSDが誕生したのでした。
自転車乗りには、いろいろなスタイルがいるけど、
この本を読んで僕と共通する所がいくつもありました。
僕は、自分の事を、ロングポタリング、ロンポタ派と呼んでるけど、
キヨシローのLong Slow Distanceと同じです。
無理せず、遠くへ行く。
そして、自転車にも共通点が。
キヨシローのイメージだと、クロモリ(鉄)に乗りそうだけど、
彼が選んだバイクは、フルカーボンです。
1台目は、ケルビムのクロモリだったのですが、
2台目は、トレック、
そして3台目に、つくば・マツナガにフルオーダーした
カーボンフレームの、オレンジ号に。
僕も最初はクロモリフレームからスタートしていますが、
「自分の力で、より遠くへ行ってみたい」
という明確な目標が出来てからは、
非力で貧脚な自分が遠くへ行くためには、
クロモリに固執するより、カーボンに乗り換えた方がいいと思いました。
それが夢を実現する方法。
自転車を知っている人が、キヨシローの自転車を見ればわかるけど、
ホイールだってコンポだって、楽に走る為に、
惜しげもなく最上級のパーツを投入しています。
キヨシローのオーダーは「より楽に遠くまで走れる」だったのです。
誤解をして欲しくないですが、僕は、カーボン信者ではありません。
遠くまで楽に行きたいなら、山も越えるし、軽いカーボンを選んだ方が楽。
23区ぐらいだったら、別に坂も関係ないし、
カーボンで盗まれる心配するより、ミニベロで気楽に行きたい。
用途によって使い分けているだけです。
まあご託を並べる前に、自転車に乗ってみる事だ。
好きなように乗っているうちに、やりたい事が見えてくるハズ。
その時に、自分のスタイルに合った自転車を選べばいい。
自転車乗りだからこそわかるキヨシローの言葉。
こんな言葉がこの本の最初に書かれている。
自転車はブルースだ。
クルマや観光バスではわからない。
走る道すべてにブルースがあふれている。
楽しくて、つらくて、かっこいい。
憂うつで陽気で踊り出したくなるようなリズム。
子供にはわからない本物の音楽。
ブルースにはすべての可能性がふくまれている。
自転車はブルースだ。
底ぬけに明るく目的地まで運んでくれるぜ。