ハチミツとクローバー

まず最初に原作は読んでいないので、映画だけ観た感想です。
…という事をお断りしておきます。

美大生の恋と青春を描いた群像劇。
よく出来ていると思った。
リアリティーを感じた。

僕の住む江古田にも芸術系の日大芸術学部と武蔵野音大と
普通の大学の武蔵大学という3つの大学があるけれど、
やはり芸術系の生徒は、独特の雰囲気を持っています。

伊勢谷友介さんと蒼井優ちゃんには、その芸術系のニオイがするのです。
伊勢谷友介さんは、東京芸大卒だし、
蒼井優ちゃんは、その江古田の日芸中退です。
ほとんど学校には来なかったみたいだけれと。

リアリティーがあるというのは、その雰囲気の事。
多くの現役、OB、OGを知っているけれど、
はたから観ていて、共通するなと思うのは、口べただなと思う事。
無口なわけではありません。
感覚が先走るので、説明が下手な人が多いのです。
そのくせ、「何でわからないかなあ」なんてジレンマを抱えている。
そして、そんないらだちから上下する感情が表に出る。
でも、アートなんて説明するもんじゃないし、それでいいのだと思います。
そういう感覚的な人が羨ましく思えるし。

映画の中の恋愛や人間模様は、説明的ではなく、その感情の上下で表現されていました。

映画の中の美大生たちは、もちろん年上の人たちが演じているというのあるけど、
本物の学生よりは大人びている。
だから、いつまでも学生気分が抜けないOB,OGの雰囲気と、ドンピシャと思った。
たぶん、あの2人でなければ、出来ない映画だったんじゃないかな。

個人的な感想として、ストーリーよりも、あの雰囲気が重要だったんじゃないかと思いました。
「芸術系の大学の青春って、こんな感じでーす!」
それさえ伝えればいいんじゃないかと思ったのです。

さて、この映画の中で、櫻井翔くんと蒼井優ちゃんがオムライスをたべる喫茶店
「風まち通り」は、この1つ前の記事で紹介した、神保町のラドリオです。

ここは美術系ではなく、多くの作家や編集者など文学系が集まるお店なんだけど、
どこか共通した雰囲気はあると思います。

ところで、このDVDにはオーディオコメンタリーが収録されているのだけど、
伊勢谷、加瀬亮、関めぐみ、蒼井優バージョンが面白かった。
ジョゼと虎と魚たち」のオーディオコメンタリー以来の面白さでした。

その中で、伊勢谷くん自身も言っています。
「この役は芸大を出てるオレにしか出来ないものがあった」と。
それを聞きながら、嫌みとは感じず、だろうなと思いました。

マンガから入った人は、原作とは違うということを言っている方が多いですが、
マンガを知らない僕は、これはこれでいいんじゃないかなと思ったのでした。

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ホノカアボーイ

ひとは誰かと出会うために生きている。らしい。
ハワイ島の北、忘れられた町ホノカア。僕が出会った風と、恋と、ごはん。
同じ世界とは思えないハワイ島の美しい風景のなかで、涙がきっととまらなくなる。

正確にはカフェというより、映画館に併設されている売店に、マラサダというハワイのお菓子を置いている女性をめぐるお話。ブログを見てそれを食べに来る、日本のブログ女もいる所がカフェっぽい。「ブログ女」は「村人1」みたいな役名でテロップにも載っています。

雰囲気は、かもめ食堂のハワイ版。日系役のかたとことの日本語が淡々としていて、倍賞智恵子さんの台詞回しも、小林聡美さんのような感じ。もしくは「西の魔女が死んだ」のハワイ版のような。

もしかしてフードコーディネイターも飯島直美さん?と思ったけど、高山なおみさんでした。ちなみに、高山なおみさんの公式サイトは「ふくろう食堂」という名前だったりします。

内容もさることながら、カメラ好きの自分が注目したのは、この映画のカメラマンが、本来は銀塩写真の市橋織絵さんであるという事。

女性に人気の写真家で、明るいハイキーな写真が特徴の方。絵本のような不思議な写真を撮られる方です。自分もファンで写真集の「gift」、当然持っていますし。

本来であればスチールがメインの方なので、カメラワークもほとんど固定。業界用語で「パン」というカメラを横に振って撮る方法は、2時間の中で3回ぐらいしか出てきません。

写真のような動画。少しだけ動き出した写真。実は自分も、そんな動画と静止画の中間みたいな事は出来ないかと、前々から思っていて、気が向いた時に撮っています。なので、この映画の映像の撮り方にものすごい興味がありました。

その他、ポラロイドのSX-70が小道具になっていたりして、カメラ好きの心をくすぐるシーンがいくつもあります。

あの震災で、恐怖の映像をイヤと言うほど脳裏に刷り込まれました。それとは真逆のこういうのんびりした映像。それを今度は取り入れて、少しバランスをとった方がいいような気もします。

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