嫌われ松子の一生

同じく中島哲也監督の「下妻物語」。
素晴らしいし、画期的な映画なのだけど、個人的にどうも好きになれずにいました。
しかし皆が口を揃えて名作というので、その事は心の中にしまい、
以降、中島哲也監督の作品は、封印してしまっていたのです。

しかし、仕事上どうしても「告白」を観なければならず、
観たら、シンプルになっている分、
スーパースローなどの技法も効果的に思えました。
リアルさと、デフォルメとグロのギャップの使い方が非常に良かったのです。

あれれ?と思っていたら、友人から
「自分も下妻は苦手だったけど、嫌われ松子は面白かったよ」と言われ、
封印を解き、松子も観てみる事に。

前半戦は「あれ?下妻テイスト?」と思ったけれど、
ミュージカル調やミュージックビデオ調になってからが、面白い!
どんどんのめり込んで行きました。

余談ですが、松子がソープ嬢になってからのシーン、
男女の営みをダンスビデオみたいに表現している所で、
とある光景を思い出しました。

その昔、鬼怒川の秘宝館に行った時に、
一番最初のコーナーにあったのが、SEXのダンスビデオでした。
男女がモジモジ君のような全身タイツで現れて踊り、
リズムのキメの部分で、器械体操のような組ワザで、体位を表現するという物。
単なる温泉場のエロアトラクションなんですが、
このアイディアすげーなと思った記憶があります。
それを芸術に昇華されると、嫌われ松子のようになる訳ですね。

まさか中島監督、秘宝館行ってないよね。

ところで、これを自転車映画として取り上げた訳ですが、
土手を走る自転車が、走り去る、駆け寄る事で、感情のUP DOWNが表現されてました。
同じ構図という所がミソですね。
こういう所は、中島監督は上手い。

自転車乗りにはおなじみの、荒川の風景も、
色調の変化で色んな場所に見えてきます。

と、苦手だったハズの中島作品がどんどん好きになり、
ビビットな色合いも苦手から好きに変化。

ただ、ハッピーエンドではなのでそういうのがお好きな方は覚悟のうえで。

と同時に、急にトイカメラが欲しくなりました。
あのビビッドな色合いをこのブログにも取り込んでみたいなと。
友人にその話をしたら、トイカメラを貸してくれる事になり、
知人のブログ写真の色合いがいいので問い合わせたら、
それを映したiphoneアプリを教えてもらいました。

よーし、色々試してみよーっと。

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南極料理人

この映画をカフェ映画ではなく、自転車映画として紹介しましょう。
何と南極でも基地の隊員は自転車に乗っていたのです。
映画では、GIANTのマウンテンバイクに乗っている姿が映し出されています。

これは映画上の演出ではなく、実際のエピソードに基づく物らしいです。
というのも、アウトドア用品のメーカー、モンベルのサイトで、
南極観測隊員に派遣された人の日記があるのですが、
そこでも自転車で南極を走り、
観測隊員にお弁当を配達する様子が紹介されていました

南極じゃないけど、お弁当を持って、自転車でおでかけというのもいいかもね。
もう少し暖かくなったら。

ところで、この映画、料理がメインなのに、
セリフの中に一度も「美味しい」という言葉が登場しません。
言わずに美味しさを見せていく手法をとっているのです。

カニを食べる時って黙々と食べるだけで旨さが伝わりますが、
この映画は全てがそう。
言葉を発せず一心不乱に料理をむさぼり食うのです。
でも、それが本当に美味しそう。
表情だけで美味しさを表現するのですが、
堺雅人さんが妻の手料理を思い出して涙するシーンも、じんわりきます。

だから、どこかで一度だけ言う「旨っ!」がオチとして生きているのです。

そして、度々このブログにも登場する
フードコーディネイター飯島奈美さんの料理。

CMの料理撮影なんかだと、美味しそうに見せる為に、偽物を使う事があります。
鉄板の上でジュージュー言う肉汁がゼラチンだったり、
ビールの泡をガスで作ったり、
美味しそうに見えるけど、実際には飲んだり食べたり出来ない物がほとんど。

でも、そんな中で飯島さんのポリシーは全部実際に食べられる物。
だからあの美味しそうな表情を引き出す事が出来るのです。

TVのグルメ番組には、
わざとらしくレポーターが迷ったフリをしてお店を探したり、
箸やスプーンなどでの「持ち上げ」というシーンを挿入したり
「肉汁が口の中で広がる」とお決まりのフレーズを言ったりする、
「お約束」というのがあります。

バラエティーで、司会者が何か言うたび、ひな壇芸人が全員立ち上がったり、
画面の隅に四角く切り取られたワイプの中で、
ベッキーや優木まおみさん、矢口真里さんが、笑ったり泣いたり…。
TVは、いつしかこのお約束から抜け出せなくなっているのだけど、
この映画を見ると、そんな方法を取らなくても、いくらでも伝える方法はあるのに
…などと思ってしまいます。

P.S
この映画の最後に登場する言葉をご紹介して、しめくくるとしましょう。

あたりまえのように水が使えて
あたりまえのように外に出かけたりすれば
ますますわからなくなっていく…。
はたして自分は本当に南極になんて行ったのか。

水のパニック買い占めに走っている人達に捧ぐ。

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