日芸祭2019

「その人それぞれに、やっぱ地獄があると思うんですよ。私には私の地獄があるし、あなたにはあなたの人生の地獄があるのだから」

…と言ったのは、元TBSアナウンサーの宇垣美里さんですが、今年の日芸祭のテーマは「地獄ゑ図」。「芸術における地獄とは何だろうか。」というものでした。

アートやエンタテインメント、作品を生み出す「生みの苦しみ」を地獄と称したように、サークル系の楽しいノリの催し物よりも、授業の延長線上にある作品展やオリジナルの物販などの方が面白かったです。

映像制作を学ぶ学科もある大学らしく、今年はVRを使った展示が目立ちましたね。入り口の所にあるのは、GoProで撮ったカリフォルニアの映像を、アメ車に乗ってVRゴーグルをかけて楽しむという物。また西棟の3階ではVRで長岡の花火大会が楽しめる部屋もありました。

個人的には西棟を、上から順に見てくるコースがオススメです。

7階は美術学科のアトリエで、油絵やイラストなどの展示があり、美術館的な楽しみ方が出来ます。写実的な物も良いのですが、現代アートのような抽象的な物、絵の具を塗りたくった物の方が、学生ならではのエネルギッシュなパワーを感じました。


面白いなと思ったのは、数人の同級生をモデルに、様々な魔女のキャラクターを作り上げたという作品。同級生の写真と共に魔女が描かれているのですが、似顔絵のエッセンスを取り入れながらも、その顔からインスピレーションされる魔女を作り出している所。同級生の見た目やキャラであだ名をつける事がありますが、それを魔女という絵で表現しているのが面白いなあと。

スマホでいろんなキャラになれるSNOWとかあるけど、それのアナログ版というか。イラストでなりたい自分に変身させてもらう二次元コスプレとか。なんか今風だと思う。

5階は文芸学科だったのですが、自分たちで作った本などが売られていました。いろいろペラペラめくって行ったのですが、面白かったのは「想像上の路地」という作品。

空想の街の地図が描かれた物が付録としてついている本で、その空想の地図を見ながら、仲間が集まってその街を舞台とした物語を書いているという短編集。小説やエッセイやマンガを読みながら、登場する場所は地図で確認出来るという文芸シムシティ。この本、買っちゃいました。

西棟の2階はデザイン学科で、実用的な小物やアクセサリーがいっぱい。何年か前に江古田のイベントでお世話になったKazariorという団体も後輩に受け継がれていました。イヤリングとか女子向けの物がメインだったので、女子高生とかが食いついていましたね。

東・南棟は、サークル系の企画が多かったのですが、自由すぎて少し焦点がボケてしまった気がしました。どこか縛りがあった方が、そこからはみ出すパワーと面白さがあるのでは無いかと思いました。

そんな中で地味ながら(失礼)いいアイディアだなと思ったのは、文芸の「誤字脱字」企画展。いわゆる校閲をテーマにしたクイズ形式の展示で、1枚の原稿用紙に書かれた文章の中から、誤字を3つ見つけて丸をつけて提出するという物。間違い探しの文芸版。


毎日新聞の校閲部が、Twitterで出題している物にちょっと似てるけど、日芸の「誤字脱字」は、誤字を探すクイズの為に、自分が読んで欲しい文章を書いているという仕掛けが面白かったです。僕も好きなんですが窪美澄さんの「ふがいない僕は空を見た」が、いかに好きかというペラ1枚の原稿に、誤字クイズが仕込まれていました。

これって、誤字を三つみつけてつなげると一つのワードになるという、リアル脱出ゲームのクイズとかにも出来そうで、面白いアイディアだなあと思いました。

ギャラリー棟で行われていたのが、放送9課というサークルが制作するラジオの公開生放送。ラジオの制作スタッフとしては、一番気になった企画です。「どうぞ中でご覧ください」と声をかけてもらったのですが、中は音がハウる為か音量低めで声がこもりやすいので、外部に向けているスピーカーの前が一番聞きやすかったです。

男性の喋り手は、若手声優のようないわゆるイケボに憧れてか、あまり声を張らない人が多かったですね。流行りなんでしょうか?

一つの設定をもうけて、まったりと喋る番組が多かったですが、もっと乱暴でもいいので「好き」という熱量だけで伝えるような熱い番組も聞いてみたかったです。

女性だけの女子会風の番組で言っていた「放送学科は女性が7対3ぐらいで、女子校みたい。人前で着替えるのとか全然平気」というような話を聞いて、自分ならそういう日芸女子あるあるを掘り下げたいなと思いながら聞いていました。

全体的には屋台とかより、授業、専攻の延長での展示が、他の大学では見られない感じで面白かったです。個人的には西棟7階の美術学科の皆さんが優勝かな?一番、熱量を感じました。

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東北のお好み焼き

中野サンプラザ前を通ったら「東北復興大大祭なかの」が行われていました。

通った時にちょうど踊られていたのが「盛岡さんさ踊り」。正直、高卒で岩手から上京したオッサンにはあまりなじみの無い郷土の祭りです。

東北の祭りといえば、青森「ねぶた祭り」、秋田「竿灯祭り」、宮城「七夕祭り」、山形「花笠祭り」と有名な祭りがある中で、岩手は福島の「わらじ祭り」と並び、イマイチ地味な「チャグチャグ馬子」という、馬が歩くだけの祭りが岩手の代表と言われてきました。僕らが子供の頃は「さんさ踊り」とか、そんな有名な祭りじゃありませんでした。

きっと地味な祭り脱却問題で、いつしかこちらにスイッチされたんでしょうね。

ただ、見てると踊りは綺麗で、阿波踊りの連に通じる、団体ごとの特色があるんでしょう。ステージの踊り手は3人でしたが、手足の動き、所作は統一されていて、ヤンキー臭のするよさこいソーランよりも、和の優雅さがあって惹きつけられました。

そして近くでは、東北の名産品を売るグルメ物産コーナーも。

目に止まったのは、山形の「いも煮」という看板の左側にある「どんどん焼き」。

「どんどん焼き」と聞いて、正月飾りを焼き、神様をお見送りする火祭りを想像する方も多いと思いますが、あれは「どんど焼き」。「どんどん焼き」というのは東北のお好み焼きです。

お好み焼きというと、関西とか広島が、天下を獲ったようなうんちくを並べますが、東北のお好み焼きというと、名前は違えど「どんどん焼きスタイル」が、定番です。

お好み焼き屋さんも、ある事はあって、お店だと東京のお好み焼きに近い物が提供されるんのですが、あまりメインの文化ではなく、お好み焼というと、お祭りの屋台で食べるというのが一般的。僕が子供の頃には祭り以外で、お好み焼きを食べるという事は、ほぼありませんでした。

僕らはお好み焼きと言っていましたが、山形の「どんどん焼き」は、クレープのように焼いた小麦粉の上に、鰹節や小エビ、青のり、紅ショウガを散らし、それを割り箸でくるくる巻いた物。

関西、広島の人にしてみれば「何だコレ?」文化でしょうが、あまりにも懐かしくて1本買ってしまいました。

関東の人にとっても珍しいんでしょうね。屋台のテントでこれを食べていると、お隣の方から「すみません。それ何ですか?」という質問が。美味しそうに見えたそうです。「東北風の屋台のお好み焼きで、どんどん焼きという物です」と売っているテントを差すと、さっそく買いに行っていました。

東北の文化とばかり思っていたのですが、調べて見ると発祥は東京なんですね。東京では戦後に廃れ、もんじゃとかになって行ったのですが、その後東北に渡り、各県で個性を出して行ったようです。

ソース味と醤油味が選べて、ソースをチョイスしましたが、よく考えると岩手は醤油味だったかな。あー、醤油味のどんどん焼き、岩手で言う「お好み焼き」食べたい。

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