フジテレビの「7ルール」を見ていたら、平野沙希子さんがピックアップされていました。様々な分野で輝いている女性の、自分のルールを探す番組で、平野さんは、新進気鋭のフードライターです。
話している事も面白かったのですが、文章が読んでみたいなあと調べてみると、著書に「生まれた時からアルデンテ」がある事がわかりました。
ちょっと待てよ!そういえば、前に聞いた事があるなあ…。そうだ!飲み友のMが、言っていたんだ!「生まれた時からアルデンテが好きなんですよ」と。彼もクリエイティブな仕事をしているのだけど、平野沙希子の文章が好きだと力説していたのです。今から3年前に。
ジュンク堂や三省堂に行ってみたのですが、在庫がなかったので、amazonで中古を買う事にしました。amazonのカスタマーレビューでの評価は異常なくらいに低いのですが、読んでみてわかりました。この本は音楽でいう所のパンクなのです。食やグルメ本、グルメエッセイが好きな人が読むと、それまでの価値観が壊され、ぶちのめされるような気分になります。
まず、タイトルともなっている「生まれ時からアルデンテ」というページ。自分は生まれた時からアルデンテ世代なので、芯が無い事を誇りのように開き直る喫茶店のナポリタンが嫌いだ!と力説。村上春樹の「カンガルー日和」の「スパゲティーの年に」で、「空想のキッチンのタイマーを15分にあわせる」って、茹ですぎだろ!と、大御所の文章にもかみついています。
いやあ、面白い!これは彼女が24才の時に書いた文章。最近、才能のある若者の作品にふれて、自分の凡才ぶりに打ちひしがれる、才能SMプレイが好きだと言いましたが、彼女の文章にもビシビシと打ちのめされていきます。
ナポリタン=昭和のいい思い出話みたいな方程式が、グルメエッセイのスタンダードとなって来ましたが、気がつけば平成元年生まれも30才、ミレニアム生まれも18才、腰の無いナポリタンが最高!なんて感覚は、もはや、オッサンやオバさんの脳内にしか残っていないのです。
誤解無きよう言ってきますが、彼女は昭和だけをディスってる訳じゃあありません。食べログに頼り、評価の答え合わせばっかりしている人や、旨くも無いのに、旨い旨いというグルメレポーター、食に対して予定調和な人達をバッサリと斬って行くのです。自虐というオブラートにつつんで、ユーモアを交えながら。
そんな中で、昭和な人達に甘やかされて生き残ってきた、ぬるま湯メニューである、ナポリタンを一通りディスったあと、(追記)として神泉「フレンズ」のナポリタンは、昔ながらの味なのにアルデンテなので最高です!と、結んであります。だよな、今の時代、ナポリタンもアルデンテにすればいいじゃん!と、腑に落ちて、スッキリしたところで、そういえば、江古田にもあったな!と思い出しました。
江古田の老舗喫茶、トレボン。ここで美味しい物といえば、クロックムッシュが代表的なんですが、実は、野沢菜ピラフや、野菜サンド、一見、普通の喫茶店メニューっぽい物が、旨いのです。過去にも書きましたが、普通のメニューを丁寧に作ると、こんなにも旨くなるんだなあという、感動があるのです。
ナポリタンもその一つです。注文してから、炒め始めるまでの時間から想像するとたぶん、麺は茹でおきなんだろうけど、それほど、ふにゃっとしてなくて、固め。シャキっとしたピーマンの歯触りが気持ちいい。あとは玉ねぎとソーセージと、平凡な具なのに、それでも美味しい。ケチャップもくどくなく、上品!全てがちょうどいい。昭和ノスタルジックも、平成も関係なく、平野さんが何と言おうと、自分にとって、これはこれで満足な一品です!
でも、平野さんが絶賛した、神泉「フレンズ」のナポリタンは、どんな味で食感なんだろう?アルデンテなナポリタン、気になるなあ。
■カフェ・ド・トレボン
■練馬区小竹町1-56-3(小林ビル2F)
■営業:10:00~22:30
■場所はこのへん