全米屈指の規模と質を誇るクリーブランド美術館では、
昨年、新たに日本ギャラリーが開設されました。
そのコレクションから、平安から明治に至る選りすぐりの日本絵画を紹介する展覧会。
「神・仏・人」「花鳥風月」「物語世界」「山水」の
4つのテーマで展示してあります
今回は割と出展している点数が少なめ。
「伊年」の雷神図屏風
俵屋宗達は、江戸時代初期の画家。号は「伊年」。
自然は豊かな恵みをもたらすと同時に、天災を引き起こす恐れの対象。
そこに宿る神仏を描いたものが多いのですが、
表情はどこかユーモラスな物が多い印象。
子供の頃「雷様におへそとられるぞ」とか、
恐れの対象を、面白おかしく話してたり、そういうのに通じるような。
『竜虎図屏風』 雪村周継
虎が漫画に出てくる猫のように、可愛らしく描かれています。
竜虎といえば、本来なら厳しくにらみ合う絵が多いのですが、
恐ろしさとかだけでなく、ユーモラスに。
この頃の作品は擬人化された物も多く、どこか漫画的要素もあります。
さて、今回も絵の知識がないもので、音声ガイドを頼りに見ていきます。
すると「燕子花図屏風の前で音声が
「男女の憂いを表現した絵」と解説しはじめました。
え?どこが?男女?
花の絵でしょ?
音声ガイドは続けます。
「伊勢物語」の第九段「東下り」を題材とした作品で、
男女の思いのもの悲しさが表されているとの事。
「燕子花図屏風」といえば、尾形光琳が有名ですが、
こちらは、その光琳を慕った渡辺始興の代表作。
尾形光琳の「燕子花図」は5千円札の裏側にも描かれているアレです。
これのどこがもの悲しいの?
まず、伊勢物語をよく覚えていないので、第九段「東下り」がわからない。
そこで、家に帰ってから、いろいろ調べてみました。
第九段「東下り」を要約すると…。
自分をつまらない人間だと思い込んで、
「京都には住むまい、東国の方に住める所をさがしに行こう」と思って旅に出た男。
三河の国の八橋という所で、一休み。
その沢にかきつばたの花がたいそう美しく咲いていた。
旅の友から、『かきつばた』の五文字を、それぞれ句の頭において、
旅の風情を歌に詠みなさいと言われて、詠んだのが次の歌。
唐衣きつゝ馴にしつましあれば
はるばる来ぬる旅をしぞ思ふ。(唐衣を着続けていると柔らかくなって身になじむようになった。
それと同じに、いつも身近にいて親しく思う妻が都に住んでいるので、
その都をあとにはるばるやって来た旅路をしみじみと思う。)
一行は、その歌を聞いて皆胸がいっぱいになって、
乾飯の上に涙を落とし、乾飯がふやけてしまった。
尾形光琳の「燕子花図」も、このシーンを描いたものだから、
5千円札の裏側にはそんな物語があったんですね。
知らなかった…。
俺って何にも知らないんだなあ。
美術館めぐりをして、自分の教養のなさに(((;゚Д゚)))ガクブルですわ。