この1ヶ月振り回されたのが、この1冊。平野沙希子さんの「生まれた時からアルデンテ」です。フジテレビの人間ドキュメント「セブンルール」でお見かけしてから、ずーっと気になっていた、新進気鋭のフードライターです。テレビで観てから著書を探したのですが、どこにも在庫がなく、古本で探して取り寄せ。
1991年生まれで、現在27才の彼女は、「生まれた時からアルデンテ」なパスタ世代なので、昭和のノスタルジーにあぐらをかいて、茹で置きの腰のないナポリタンの向上心の無さが許せないと、これまでのグルメライターとは違う視点で文章を書く人です。
今発売中のグルメ雑誌「dancyu」では、食パンの特集をしているのですが、その中で名物編集長が「ピザトースト」を取り上げながら、「世の中には、味を極めないぐらいが、ちょうどうい料理がある。ナポリタンとか…」と、語っています。まあ、一般的にナポリタンと言ったら、こちら派が主流でしょう。「dancyu」だって、オッサンが読む雑誌だし、その世代に向けたメッセージとしては、間違いではないと思います。
ところが、時代は、もう平成30年。
ここからは、オッサンの領域に平成生まれが突入してきます。生まれた時からアルデンテ世代です。今、発売中のPOPEYEは、東京特集なのですが、その目玉となっている付録の冊子が、平野沙希子監修の「二〇一八年の東京 味な店」で、アラサーぐらいまでの世代に知られている、平野沙希子さんを担ぎ出して、これまでのグルメ評との差別化がはかられています。
平成生まれから見た、昭和な人達は、自分達が見ていた大正時代の人達な訳ですが、もうすぐ年号も変わってしまう訳で、新たな年号の人達から見た自分達は、明治時代の人のように見える訳です。俺たち、文明開化!そりゃあ、時代のズレも出るでしょ。あきらかに、今年あたりから、世代のメインストリームが入れ替わり、オッサン、オバサン達が、徐々に世間の流れから取り残されて行くんだろうなと思います。
という話を番組スタッフと話していたら、平成生まれの27才の若手放送作家が、これまでTVというと、テレビブロスのような雑誌が、テレビをサブカル風にとらえて、人気を呼んできましたが、今発売中の男性雑誌雑誌「EYESCREAM」では、「インターネットTVっ子」という特集で、今観るべきネット番組や、動画など、地上波を抜いた、尖ったネット番組特集をしていて、若者はもう、「TV=地上波」という価値観ではないと教えられました。
僕もオッサン側なので、こういう話を聞くたびにショックを受けるのですが、否定はせずに、一応、体験してみるようにしています。敵?というか、違う感性を知る事により、自分なりの戦い方が見えてくると思うからです。
今、発売中の雑誌は、4月という事もあり、「東京」を特集した物が多いのですが、そのほとんどが、ノスタルジックな目線で語る、東京懐かしの場所特集。要するに、昭和なナポリタン側の視点による、東京。「うまれた時からアルデンテショック」を受けた直後だけに、こんなオッサン視点ばかりじゃ、若者は雑誌読まなくなるよなあ…と思いました。戦いを放棄している。
さて、その「生まれた時からアルデンテ」の中で、
神泉「フレンズ」のナポリタンは、昔ながらの味なのに、アルデンテなので最高です。
という記述が、あります。
まあ、すぐにこのお店に答え合わせに来ても良かったのですが、それじゃあ面白くないので、まずは、自分になりに江古田で食べ歩き、アルデンテなナポリタンを探し、「きっとこうだろう」という仮説をつかんだうえで、足を運びたいなと思った訳です。若者に迎合したい訳でもなく、あくまでも自分の中になかった価値観を、新たに取り込みたい。そういう欲に駆られました。
ただ、残念ながらオッサンである証拠に、喫茶店の前にHONDAのCB750が止まっていると、マンガの「750ライダー」を思い出します。「フレンズ」があの喫茶店「ピットイン」とオーバーラップ。
スパゲティ、ハンバーグのせのハーフ。量が多いのでハーフがお勧めと言われました。待望の品に興奮して、値段忘れる失態。
まず、サラダを食べたら、ゴマのドレッシングが美味しい。いろんな所で出てくる、やっつけサラダとは訳が違います。丁寧に作られています。
さて、アルデンテなナポリタンは、どうでしょう?あれ?思ったより味が濃いなあ。味付けの方は完全に昭和だけど、炒め具合が絶妙なのか、ケチャップが滑らかで、吸い上げた時の食感が心地いい。そして、問題はアルデンテなスパゲティーです!なるほど、どうしてナポリタンはモチモチがいいという価値観になったのでしょう?絶対、アルデンテな方が旨いじゃん!
こういう新しい価値観を知る事が出来て良かったです。これから感性が若返る事は無いと思うけど、思考停止して、老化してしまう事だけは気をつけたいなと深く、深く、思いました。
食べ終わりというか、戦い終えたような気分から解放され、軽く放心状態。これから世代交代の波は、ますます訪れるんでしょうね。
例えば、紅白歌合戦って、若い世代とシニア世代の価値観が、全く違って、相反しますよね。若い世代は、ヒット曲のない演歌歌手が、毎年同じ歌を歌う意味がわからないといい、シニア世代は、名前を知らない歌手ばかりで、最近の紅白は面白くないという。やはり名の知れた歌手が出てこそ、年末の歌の祭典だと。まあ、どちらの言い分もわからないでもないですが。
ただ、冷静にアーティスト別の視聴率をチェックすると、演歌系では、白組2番手の山内惠介さんを除いて他の方は、前のポップス、ロック、アイドルのアーティストより、軒並み視聴率を落としています。視聴率が全てではありませんが、需要の目安の一つの指標ではあります。
時代のメインストリームが、入れ替って来ているのは、まぎれもない事実ですね。
ところで、フレンズのあるマンションに建て替えの看板があるのを見つけました。これは、もうすぐ食べられなくなってしまうのかな?とチェックしたら、平成26年に着工して、28年に建て替え完成予定となっていました。マンション建て替えの反対運動でも、盛んに行われたのでしょうか?まあ、なにはともあれ、無くなる前に食べる事が出来て、本当に良かったです。アルデンテなナポリタン。
■フレンズ
■東京都渋谷区神泉町18-8 松濤ハイツ 1F
■営業:11:00~21:00
■定休日:日曜、祝日
■場所はこのへん