モネ、風景をみる眼(国立西洋美術館)

上野駅

上野で行われているモネ展に行くという話しをしたら、
みんなが行きたいと言い出して、男女8人で行く事に。
修学旅行の一班ぐらいの人数ですよ。
大人の修学旅行って言った感じですね。

上野駅の構内に各美術館のチケットを扱うチケットセンターがあるので
こちらで購入。
案の定、美術館のチケット売り場は大行列でした。

国立西洋美術館

1月23日には、来場者数が10万人を突破したそうです。
モネって人気あるんですねえ。

セーヌ川の日没、冬

大人数で行って面白かったのは、それぞれの感想の視点が違う事です。
「セーヌ川の日没、冬」
大学時代美術を勉強していた人は、
「この絵は高い絵の具ばっかり使ってる。金持ちじゃなきゃかけない」
なんて言うし、クラシック音楽を専攻している人は
「モネの絵はクラッシックで言うと、ドビュッシー」
とか言い出す。

と思えば、
「きれい〜。ハワイ思い出す」
とか不思議な事を言い出す人もいたり。

僕が例のごとくガイド機に頼って、絵を見ていると
情熱大陸のナレーターの窪田等さんが、あの声で、
「もう一度、セーヌ川の日没をご覧下さい」
と、言い出した。

絵の方に動こうとしたら、ガイド機を借りてた友人が、
自分の動きとシンクロして、同じ絵の方へ。

館内は自由行動にしたので、バラバラに観てるのだけど、
自分は割とペース遅めのじっくりみる派らしい。
なんか、一人で観るのと違って、いろんな事が新鮮で、面白かった。

舟遊び

僕が楽しみにしていた絵の一つが、モネの「舟遊び」

ハロプロのアイドル、スマイレージの和田彩花さんは、
大学で美術を学ぶほどの美術好きなのですが、
ネットで、「乙女の絵画案内」という連載も持っています。
これがアイドルとは思えない、かなり本格的な物なのですが、
このモネの「舟遊び」の回では、文中で、

初めて実際に観たとき、ボートの下に描かれている赤い線のようなものが見えて、
なんだか邪魔だなあと感じたのを覚えています。

「これ何だろう? 何で赤をここに描くんだろう」って。

でも、少し離れて観てみると、その赤がとてもいい感じに絵を成立させていたんです!

周りの風景が描かれていなくても、この赤の存在だけで、
絵は成り立つんじゃないかとさえ思ったほど、
効果的にボートの動きや光のきらめきを表現していたんですね。

なんて事を言っていました。

そこで、ネットで画像を検索してみても、
残念ながらその赤がはっきりとわかる画像がありません。
なので、今回展示されてると知って、その「赤」を確認したかったのです。

確かに近寄ってみると、赤い線が描かれていました。
水面に映っている影の方で、女性がボートに手をついているあたり。
そして、頭のあたり。
赤い線がゆらゆらしているのです。

やっぱ本物を見るってこういう事なんだな。
ネットでは絵は見れるけど、筆のタッチまではわからない。
近寄ってその赤い線を確認したり、
少し遠くから見て、絵に溶け込ませたり、
そういう観た方は、本物を前にしないと出来ないって事ですね。
美術素人の自分でも、少しずつ見方がわかってきました。

この乙女の絵画案内は、アイドルの視点で、わかりやすく、
だけども、割と本格的に絵を語ってくれます。
なので、僕のような美術初心者の入門編として、とても面白く読めます。

ぜひ、読んでみて下さい。オススメです。
乙女の絵画案内

睡蓮

さて、モネと言えば「睡蓮」
モネは睡蓮だけで200点近く絵を書いていたそうです。

元々同じ題材を何作も描くことで、いろんな物を発見して行くというのが
モネの手法。
なので、「積みわら」「ポプラ並木」「ルーアン大聖堂」など
同じ題材の絵が沢山あります。

そして自分で庭を設計し、その池を何度も描いたのが「睡蓮」。
芸術的な庭を造って、そこからまた芸術を生み出すとか、なんかすげーな。

モネも当初は貧困にあえいだ事もあったけど、
後年は、成功からの余裕が感じられる作品が多い印象でした。

海辺の母子像

モネ以外で印象的だったのは、ピカソ。
青の時代に描かれた「海辺の母子像」。

モネとは対照的に、親友の死をきっかけに、
生と死、貧困といった題材に打ち込んだピカソ。
絵からは明るくあたたかな色彩が消え、しだいに青い闇に覆われていきました。

モネの一枚目に紹介した「セーヌ川の日没、冬」は、
奧さんを亡くした後の作品で、
そこからの自分の再生の課程に描いた一枚なんだけど、
ピンクとか使ってるんだよね。
同じ死と向き合ってるのに、ホント対照的。

この1枚を観たら、無性にピカソも観たくなりました。
ピカソを観れるところ、探そう。

スタバ

さて、どん尻になってしまった自分を、
みんなはスタバで待っていました。
というか、常設展の方で、ムンクのリトグラフ展やってたのですが、
みんなはそれに気がつかなかったみたい。
観たの自分だけ。
なので、1時間ぐらい待たせてしまいました。

上野公園

上野をぶらぶらと散策。
カメラ女子達は、猫だとか池のスッポンとか、
いろんな物にひっかかるので、歩くの遅い。
そこは、絵を見るのと反対だな。

鳥番長

この日は最初から飲む予定だったので、自転車じゃなく電車。
友人が見つけた鳥料理の店へ。

鳥の丸焼き

鳥料理を食べながら皆で、反省会。
酒を飲みながら、モネのどれが良かったとか語り合うなんて、
そんな日が来るとは、想像もしてなかった。

美術を勉強した人が、「油多めの筆固め」とか
ラーメン二郎の注文みたいな事言い出したり、
アニヲタに、「油絵の女性に萌える事あんの?」なんて聞いてみたり。
自転車乗りの僕は、あの絵はどこそこの風景に似てるとか。

学校の勉強みたいに、どれが正解って話しじゃなく、
もう絵を見た感想を好き勝手にしゃべってる。
初めて大人数で絵を見に行ったけど、それも楽しいね。

また、皆でどこかに行こうと盛り上がった夜なのでした。

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人間国宝展(東京国立博物館)

東京国利博物館

東京国利博物館で、
クリーブランド美術館展と同時開催されているのが、
「人間国宝展―生み出された美、伝えゆくわざ―」

チケット

どちらの展覧会も単独だと1000円なのですが、
共通チケットを買うと1600円とお得なので、こちらも観ることに。

つまり、どちらかというとついでに観た感じだったのですが、コレが良かった!

人間国宝っていうと伝統を守る保守的な人間かと思い込んでいたのですが、
技を吸収した上で、現代へと変化させる革新的な人達でした。

「人間国宝」は、現代にも続く伝統の「わざ」の継承者であると同時に、
その工芸の発展に尽力し、新たな作品と技を生み出して来ました。

正倉院などに収蔵されている国宝の技法を元に、
現代のエッセンスを加えて新たに作り上げられたもの。
それが並べられて、比較で展示されているのが、すごいわかりやすい。
ピンクの台座に展示されているのが、元になった国宝。
そしてブルーの台座に展示されているのが、
それを元に、現代の人間国宝が作った作品。

そして、工芸品は芸術であると同時に、使われる事を考えたれた逸品です。

銘広沢

こちらは茶の湯が盛んだった桃山時代を代表する志野の名碗「広沢」。
柔らかな白と、緋色と呼ばれる赤みが独特の魅力を生み出しています。

志野茶碗

桃山時代のの茶碗は多くの作家を魅了し、
それに挑み、学び、新たな創作を生み出しています。

下は、志野の技を究めた荒川豊蔵の作品。
漫画「美味しんぼ」の海原遊山のモデルとなった北大路魯山人と出会い、
漫画でいうところの美食倶楽部「星岡茶寮」で使う器作りにいそしんだ人。
古志野を研究し、荒川志野という自分の世界を作り上げていった人でもあります。

…というのは、新たな勉強した情報ですが、
こんな感じで、昔の宝物を研究し、その技術を分析し、
さらに、そこに現代の技をプラスして、新たな物を作り上げてきたのが人間国宝。

たとえば、染色であれば、天然染料に加えて、
化学染料を使ってこれまで出来なかった世界を作り出すとか。
僕のような凡人だと、伝統を守るというと、
当時の物以外は邪道とかとらえてしまうけれど、
そうじゃなく、必ずみんなプラス1以上の事をしてきています。

その伝統を研究しつくした上で、そこに自由がある事が、ホント目から鱗でした。

何かにインスパイアされて、今新しい物を作り上げたいと思っている人
人間国宝達のアイディアが非常に参考になる展示会だと思います。

個人的には、人間国宝の染色家が作った浴衣が凄く良かったです。
浴衣というと、非常に庶民的な物のイメージ。
だから遠くから観ると、人間国宝の作った作品も、着物や友禅と違って、
なんとなーく庶民的な雰囲気がします。

ところが、近くによって細部までみると、
人間国宝の技がふんだんに使われていて、芸術的な染め物な訳ですよ。

どう例えたらいいのだろう?
んー、庶民的な鯛焼きという物を、
人間国宝が、最高級の素材と料理の技を全て駆使して、
茶道の名人が認める茶菓子に作り上げた…みたいな。

あれを観ると、自分たちが作ったり、書いたりするものも、
まだまだ良くする方法あるのに、考えが足らない…。
それを思い知らされたような気がしました。

クリエーター的なお仕事に就かれている方は、観て損がない展示会です。
個人的には、クリーブランド美術館展より、こちらにショックを受けました。

人間国宝の徳田八十吉の作品がアマゾンで売られてる(((;゚Д゚)))ガクブル。
しかも人間国宝の作った陶器に入った、サントリーの響が、
10万円引きとえばいえ、94万円…。

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