ホノカアボーイ

ひとは誰かと出会うために生きている。らしい。
ハワイ島の北、忘れられた町ホノカア。僕が出会った風と、恋と、ごはん。
同じ世界とは思えないハワイ島の美しい風景のなかで、涙がきっととまらなくなる。

正確にはカフェというより、映画館に併設されている売店に、マラサダというハワイのお菓子を置いている女性をめぐるお話。ブログを見てそれを食べに来る、日本のブログ女もいる所がカフェっぽい。「ブログ女」は「村人1」みたいな役名でテロップにも載っています。

雰囲気は、かもめ食堂のハワイ版。日系役のかたとことの日本語が淡々としていて、倍賞智恵子さんの台詞回しも、小林聡美さんのような感じ。もしくは「西の魔女が死んだ」のハワイ版のような。

もしかしてフードコーディネイターも飯島直美さん?と思ったけど、高山なおみさんでした。ちなみに、高山なおみさんの公式サイトは「ふくろう食堂」という名前だったりします。

内容もさることながら、カメラ好きの自分が注目したのは、この映画のカメラマンが、本来は銀塩写真の市橋織絵さんであるという事。

女性に人気の写真家で、明るいハイキーな写真が特徴の方。絵本のような不思議な写真を撮られる方です。自分もファンで写真集の「gift」、当然持っていますし。

本来であればスチールがメインの方なので、カメラワークもほとんど固定。業界用語で「パン」というカメラを横に振って撮る方法は、2時間の中で3回ぐらいしか出てきません。

写真のような動画。少しだけ動き出した写真。実は自分も、そんな動画と静止画の中間みたいな事は出来ないかと、前々から思っていて、気が向いた時に撮っています。なので、この映画の映像の撮り方にものすごい興味がありました。

その他、ポラロイドのSX-70が小道具になっていたりして、カメラ好きの心をくすぐるシーンがいくつもあります。

あの震災で、恐怖の映像をイヤと言うほど脳裏に刷り込まれました。それとは真逆のこういうのんびりした映像。それを今度は取り入れて、少しバランスをとった方がいいような気もします。

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イル・ポスティーノ

1950年代。ナポリの沖の小島に、チリの国民的詩人ブロ・ネルーダが亡命してきた。
島の貧しい若者マリオは、
世界中からこの詩人へ送られてくる手紙の配達人を引き受ける。
ネルーダとのささやかな交流の中で、次第に言葉の美しさに魅せられていくマリオ。
島のバールで働く美しい娘に恋心を抱く彼は、ネルーダの励ましを受け、
愛の言葉を彼女に送り続けた…。

岬の先の一軒家に住む詩人。
その家に向かう、美しい海の見える道を、郵便屋さんは自転車で配達に向かいます。
自転車は、あくまでも仕事の道具。
しかし、田舎を走る自転車の速度が、
この映画を作る上での肝となっているのです。

詩人に憧れる郵便配達人は、どうやったら詩人になれるのかを尋ねます。
その答えは
「入り江に向かいゆっくり岸を歩きなさい」

郵便屋さんは、その教えを守り、ゆっくりと海沿いを歩きます。
そして、波がひいては返す様子、空の様子、入り江の自然、
様々な美しい瞬間、一場面に気づき、それを言葉にしてみるのです。

その詩人の教え同様、ゆっくりと走る自転車を追う映画のカメラは、
イタリアの田舎町の美しさを、映しだして行きます。

途中、詩人に比喩、隠喩の方法を教えてもらうシーンがあるのですが、
最近「母さん、マジ、感謝」みたいな直接表現の歌詞ばかりを多く耳にしていたので、
そこに込められた、間接的な美しい言葉の表現に
心洗われるような感動がありました。

電車や車から見える風景。
スピードが上がればあがるほど、遠くの風景しか見えなくなってきます。
きっとその移り変わりに、頭の中の情報処理能力が追いつかなくなってくるのでしょう。

でも自転車なら大丈夫。
ミュージシャンの皆様、自転車で走ってみると、
作詞の際に頭に浮かぶ光景が、少し変わってくるかもしれませんよ。

英国アカデミー外国語映画賞
日本アカデミー外国作品賞

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