ジョゼと虎と魚たち

障害者との恋を描いた映画。
ほろ苦いお話だけれど、最後に池脇千鶴さん演じるジョゼの強さに救われる。
悲しい映画だったり、つらい映画には、
救いのカットというのが挿入される事が多いですが、
この映画では、最後、池脇千鶴さんが電動の車いすで疾走するシーンでしょう。
少し大人になり、自立した強さが、
自転車と同じスピードで走る、電動の車いすで表現されています。

その他、乳母車のシーンなど、
周りを走る自転車のスピードが物差しとなり、
ジョゼの疾走感が描かれています。

大阪という設定となっているけど、ロケ地はほとんどが東京。
観たた事がある風景がいっぱい出てきました。
河原は荒川サイクリングロード。
ちょうど都営新宿線が荒川を渡るあたりですね。
風景と鉄橋の形ですぐにわかりました。

そう考えるとサイクリングってホントすごいですね。
物忘れが激しくなった自分でも、走った風景が記憶されているもの。

映画論評みたいなのでは、
池脇千鶴さんのヌードは必要あったのかなどと書かれていますが、
あって良かったと思います。
生々しさが表現されている。

観終わった後にDVDのオーディオコメンタリーを観たのですが、
池脇千鶴さんが「バーンと脱げるように、胸整形したい」と言い、
妻夫木君と犬童監督が止める所があります。
この生々しさがいいんだと思います。
逆に作り物の綺麗すぎるおっぱいなら、脱ぐ必然性がないと思います。

このオーディオコメンタリーからは、
それぞれの作品に対する愛が伝わってきて、すごくいい。
そして池脇千鶴さんの可愛らしさが出ていて、惚れる。

先日、とある映画評論家と映画についてお話した時に、
映画なんだからエンターテイメントを見せて欲しいと言っていましたが、
その逆で、どうリアルさを出すかという路線もあると思います。

踊る大捜査線が出るまで、刑事は容疑者にカツ丼を食べさせていました。
そういう刑事ドラマをエンターテイメントにする為の
お約束ってものが、いっぱいありました。
刑事が張り込みしながらあんパン食べたりね。
だいたい暴力団は龍神会で、チンピラは鮫島とか。
今では忘れ去られているけど、そのお約束を破って
設定を「公務員」というリアル寄りにしたのが「踊る…」だったのです。
その後、またエンタメ路線に向かいましたけどね。

先日、池袋の駅前で男が職務質問を拒否して車に立てこもるという事件があり
その現場に遭遇したのだけど、
刑事ドラマや警察24時とは違い、実に淡々としていました。
一台の車を3台のパトカーで囲んだまでは派手だったのですが、
男が職務質問を拒否すると、捜査令状が届くまで、警官はずーっと立って待ってるだけ。
ドラマチックな説得シーンもなければ、容疑者との大立ち回りもなし、
周りの野次馬もおとなしく観ているだけ。

確かにこれじゃドラマにも映画にもならない。

でも作り手としては、そういうリアルさと格闘してみたくなる時があります。
実は淡々と過ぎていく日常をどう描くか。
エンターテイメントとリアルさのせめぎ合い。
その難しいさじ加減が、この映画を躍動させているように感じました。

そう考えると、大阪で撮ったらさらにいい映画になった気もしますが。

貧しい家庭のジョゼが作る料理は、シンプルながらどれも美味しそう。
フードコーディネイターは、飯島奈美さんかと思いましたが、違うようです。
オーディオコメンタリーでは、妻夫木君が、
「フィルムで写すとさらに美味しそうに見える」と力説。
カメラでもやはり銀塩の方が美味しそうに見えるんでしょうかね。

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お花見

花見

日曜日にお花見をしました。

青森、岩手、宮城、福島。
参加者の中には多数の被災地出身者が含まれていました。

参加にあたって、東北の物を持ち寄ろうという事に。
youtubeでもお花見のお願いをしていた、日本酒の南部美人。
被害の大きかった釜石の浜千鳥、宮城県塩竃の浦霞。
岩手県の銀河高原ビール、茨城県の常陸野ネスト。

つまみも、仙台の笹かまぼこ、牛タン、
釜石のホヤの塩辛、岩手県宮古市のいくらの醤油漬け。

故郷である宮古市の「いくらの醤油漬け」のお店に電話してみたら、
商品は津波を免れたのであるのだけれど、
クール便が配達の受付を中止しているので、発送出来ないとの事。
盛岡にも支店があるというので、盛岡の弟にお願いして送ってもらった。

参加者の中には、今回の震災を期に、逆に、故郷へ帰る決意を固めた人もいる。
その送別会も兼ねている。

ACのCMで「思いは見えないけど、思いやりはみえる」という物があった。
裏を返せば、いろんな思いのつまったお花見だけど、その思いは見えず、
他人からはただの宴会にしか見えなかったろう。
苦々しく思ってた人もいるだろう。

写真は真実を映し出すというけれど、その逆もある。
テレビの映像や写真は、その一部を切り取り、それが全てだとウソをつく。
今回の震災を通じて、一番感じたのはそれだ。

ならば、いぶかしげな物を、あえてウソっぽく映し出す事は出来ないかと、
トイカメラを探し始めた。
この写真は、 NeinGrenze 5000Tというチルトレンズを搭載したカメラで、
発色もオーバー気味で、プラスチックのおもちゃのように取れるカメラ。

そんなお花見をウソっぽく撮ってみた。
被災地の方からすれば、同じ日本でウソのような光景に見えるだろう。
でも、こんな幸せな光景も、いつか一瞬で消え去ってしまうかもしれない。
現に消えてしまった場所があるのだから。

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