自由学園明日館(池袋)

自由学園明日館

バミューダトライアングルという言葉があります。フロリダ半島と、プエルトリコ、バミューダ諸島を結んだ三角形の海域は船舶や航空機が忽然と消失するという伝説のある、不思議な場所。

それとは、ちょっと違うのですが、JRの池袋と目白、西武池袋線の椎名町を結ぶこのトライアングルも、少し、不思議な場所です。

3つの駅に囲まれていながら、何があるかあまり知られていない場所。道が入り組んでいるので、車で通りかかる人も少なく、大通りからは、道を挟んだ奥にあるので、駅から足をのばす人も少なく、偶然、通りかかるのは、自転車でぶらぶら散歩している人ぐらいでしょうか。

後ろに見えているのは、池袋西口のホテル・メトロポリタン。こんなに近いのに、この自由学園明日館も、あまり知られていないものの1つです。ちなみに、明日館と書いて「みょうにちかん」と読みます。

帝国ホテルを設計した、アメリカが生んだ巨匠フランク・ロイド・ライトの設計により1921年(大正10年)に、建設された建物で、国の重要文化財にも指定されています。

実はこの建物、内部も見学が出来ます。この建物の右手に受付があり、見学のみは、400円。その他に、喫茶付見学というのもあり、こちらは600円。

…という訳で、喫茶付見学をする事に。

食堂

現在、自由学園は西武池袋線の、ひばりヶ丘に移転していますが、こちらは、記念館的な存在として、動態保存されています。動態保存とは、使いながら保存するという形式。

なので、こちらで結婚式なども行われたりします。

もともとキリスト教の学校としてスタートしたためか、どこか教会を思わせる作り。

ホール

喫茶が楽しめるのは、こちらのホール。ちょうど、建築学を学んでいる大学のゼミの生徒たちが、ガイドに案内されながら、館内を見学していたのですが、それに便乗して、ガイドを盗み聞き。

その説明によると…。ホールの入り口を中二階にして、わざと天井を低くしているのは、設計者フランク・ロイド・ライトの隠しワザの一つであるそうです。

それは、低いところを抜けてくる訳だから…。

大窓

それを抜けてホールに出ると、天井が高く、広さと開放感を感じるという演出。確かに、ゆったりとした雰囲気で、妙に落ち着く空間です。

椅子

ガイドさんによると、この椅子も、古い歴史をもつもので、美術館などが、展示のために借りに来る事があるそうです。その展示の時には、ガラスケースに収められ、大切に展示されるものを、こちらでは、動態保存という観点から、使いながらメンテナンスをしているそうです。

喫茶

アイスティーとクッキーを頂きながら、静かに流れる時間に、身を任せました。礼拝を行っていた場所だけに、なんだか厳かな気持ちにもなります。

重要文化財なので火気厳禁で、禁煙なのも嬉しい。

ショップ

明日館の敷地内には、ショップもあります。自由学園の工芸研究所の中から生まれた、バッグや衣類、文具などの商品が。

講堂

道を挟んだ反対側には、講堂があります。この日は、ピアノの演奏があり、それを自由に聞くことが出来ました。

■自由学園明日館
■東京都豊島区西池袋2-31-3
■見学:10:00~16:00
■休館日:月曜(休日の場合翌日)
場所はこのへん
自由学園明日館公式サイト

土日は、結婚式が行われる為に、中には入れず外観のみの見学。その他、日にちによって限定見学が多いので、公式サイトのカレンダーをチェックしてからお出かけください。

関東大震災、第二次世界大戦と、焼け野原になった池袋。なのに、なぜかその被害や戦火をくぐり抜けて来たこの建物。もしかして、パワースポット?

大けやき

さて、自由学園明日館から、また少し路地を入ると、今度はこんな光景が。大きな木の下に並ぶ、家々。

蔦の家

蔦に覆われた家。都会の中を密かに植物が這い出しはじめたような、ラピュタの天空の城とか、遺跡のような雰囲気。

ツリーハウス

反対側にまわってみると、家の間にそびえ立つ、大きなケヤキの木。まるでツリーハウスのようです。

池袋のすぐ近くにこんな場所があるなんて。やはり、このトライアングルには、何か不思議な力が働いているような気がします。

踏切

テレビや舞台の用語で、風景などの絵が書かれたセットの事を「書き割り」と言います。風景に見えるけれど、実はペラペラの板一枚。

電車から見える風景って、この書き割りのような存在なのかもしれません。実は表面を見ているだけで、その裏に何があるのか、多くの人は知りません。

西武池袋線の踏切の奥に見える、森。これも、その一つだと思います。電車からは見落としてしまうし、車は通れない踏切。ここを通るのは、自転車と歩行者。

白壁

踏切からは、長い白壁が続きます。

目白庭園

この塀の中にあるのが目白庭園。豊島区の公園で入場料は無料です。

池

一日、何万人という人を乗せた電車が、あの踏切を通るけれど、その奥に、こんな庭園があると知っている人は、どれだけいるのでしょう?

東屋

手前に見えるのはモミジで、紅葉の時期は素晴らしい景色になる事は間違いありません。

散歩道

山道のような散歩道があったり…。

滝

途中には、滝も。そこにかかるのはモミジ。

ここは京都じゃありません。くどいようですが、西武池袋線のすぐ脇です。

赤鳥庵

茶室のような赤鳥庵の下には、ベンチが置かれていて、ここがカップル達にとっての、穴場中の穴場のデートスポットです。

庭園

そのベンチから見える風景がこれですもの。

あの木々の後ろ10メートルもしないような場所を、西武線が走っている訳です。西武池袋線利用者なら、この驚きがわかるハズ。

赤鳥庵

庭園を見下ろす「赤鳥庵」は、茶道・華道・句会・碁会などの趣味の集まりを中心に、各種会合に利用できます。

芝生

木々に囲まれた小さな芝生の広場では、若いカップルが並んでお話していました。ここを知ってる、あのカップル。そして、こんなデートをしている二人。きっと、幸せになれると思う。影ながらお祈りしています。

■目白庭園
■東京都豊島区目白3-20-18
■開園
庭園:9:00~17:00(7月、8月は19:00まで)
赤鳥庵:9:00〜21:00
場所はこのへん

赤鳥庵の利用は事前に申し込みが必要です。

目白庭園公式サイト

電車や車じゃ見つけられない風景。だからチャリ散歩は、面白いのです。

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キアズマ珈琲(雑司ヶ谷)

側道

中心の気圧は960ヘクトパスカル、最大瞬間風速は55メートル。
前夜、父島の西まで近づいている台風12号のニュースを聞いて、
週末の遠出は、あきらめていました。

ところが一夜明ければ台風一過。
素晴らしい青空が広がっています。

それでもやはり、台風の影響で風はやや強いので、
クロスでの遠出ではなく、ママチャリでの近場探検に切り替えました。

西武線の江古田から千川通りを真っ直ぐ進み、目白通りに合流。
そのまま真っ直ぐ進んで目白駅を通過し、
さらに明治通りを越えてすぐ左折すると、もうそこは雑司ヶ谷。
ほぼ、1本道で来る事が出来ます。
所要時間は、ママチャリでも15分前後。

都電

少しややこしいのは、地下鉄副都心線では「雑司ヶ谷」ですが、
都電荒川線では「鬼子母神前」。
荒川線の「都電雑司ヶ谷駅」は、もう少し池袋寄りにあります。

鬼子母神参道

駅から見えるケヤキ並木。
「鬼子母神」の看板が無かったとしても、
おそらくこちらの方向だろうという事は推測出来ました。
参道と並木はセットであると、記憶に刷り込まれているからです。
勘という名の体の中のナビが、自然とこちらの方向に足を誘導します。

歌川広重

江戸時代から、このケヤキ並木は雑司ヶ谷のランドマークだったらしく、
歌川広重の浮世絵にも描かれています。
多くの参拝客が訪れ、参道には茶屋が建ち並び、賑わっていたようです。

ケヤキ並木

現在の参道はというと、少しひっそりとした様子。
参拝客目当てのお店も消え、静かな住宅地となっています。
そんな中にひっそりと、古民家をリフォームしたカフェがあったので入ってみる事に。
写真の右手前のお店です。

キアズマ珈琲

お店の名前はキアズマ珈琲。
この長屋のような物件を改装した、古民家カフェです。

以前は中華料理屋さんだった物件なのですが、
古い建物と雰囲気を生かすために、アルミサッシだった扉をあえて木製に戻すなど、
空気感とまとめる事によって、いい味が出ています。

右から二番目の引き戸だけデザインが違うのがわかりますでしょうか?
実はコレ網戸で、涼しくなってきたのでクーラーを止め、
自然の風が入るようになっているのです。

店内

店内はアンティーク風だけではなく、古さと新しさが融合。
カウンターの中の壁は緑に塗られ、
黒板のようにチョークでメッセージを書けるようになっています。

椅子

古民具のような椅子達は、よく見ると違うデザイン。
しかし風合いが揃っているので、統一感があり違和感がありません。

この少し違う感じがいいんでしょうね。
きっちりとした統一感は、悪く転べば無機質な感じになりがちですが、
このデコボコな感じが、逆に人間的な温かみを生んでいるような気がします。

この物件は、変わった物件でおなじみの「東京R不動産」が扱ってる場所なんですが、
お店のリフォームの様子が、サイトに掲載されているので、
自分でリノベーションしてカフェをオープンしたいと思っている人など、
参考にしてみてはいかがでしょうか?

サンドイッチ

ビーフパストラミサンドは、500円。
アイスコーヒーは450円ですが、セットは50円引きで、合計900円。

1階は禁煙席なので、
トーストされたばかりのパンの香り、
カウンターの中で珈琲豆を挽く香り、
食欲をそそりながら、なぜか気持ちを穏やかにする香りが、鼻腔をくすぐります。

周りのお客さんの話し声も、適度に控えめで、
BGMのJAZZも、あくまでも裏方に徹し、主張しません。
そしてお店のデザイン。
全てが適度に控えめでバランスが良く、とても居心地がいいのです。

そういう雰囲気が人を呼ぶのでしょうか?
土曜日の2時過ぎでしたが、この後、すぐに満席になりました。

■キアズマ珈琲
■東京都豊島区雑司が谷3-19-5
■営業:10:00~19:00
■定休日:第1・3水曜日
場所はこのへん

雑司ヶ谷案内処

キアズマ珈琲の隣りにあるのは、雑司ヶ谷案内処。

観光マップ

この付近を観光マップを持って散策している人達が多いのですが、
こちらで無料配布されている物だったようです。

様々なチラシやフリーペーパーが置かれ、
この参道のお店の事だけでなく、雑司ヶ谷全体の情報が手に入る他、
近隣のお店の商品を展示するBOXなどもあり、
合同ショーケース的な役割も持っている場所です。

ともすれば、各お店、各商店街はバラバラに行動、活動しがちですが、
ここはそういう「点」をつなぐ役割をしていて、
散策する側としても、一度に情報が入り、ありがたい存在です。

お店という「点」や商店街という「線」ではなく、
雑司ヶ谷という「面」で、街全体を盛り上げていこうという事なんでしょうね。

手塚治虫イラスト

この案内所の裏手に、並木ハウスというアパートがあるのですが、
かつて、あの手塚治虫さんが住み、マンガを書いていた場所だそうです。

同じ豊島区の椎名町に、あの「トキワ荘」があった時代。

遊びに来たはずの藤子不二雄さんが、マンガを手伝わされたり、
上京して間もない石ノ森章太郎さんや赤塚不二夫さんなどが訪れたり、
当時の思い出を描いた手塚さんのイラストが、この案内所の二階に飾られています。

並木ハウス

という訳で、裏手に回ってみました。
今も、並木ハウスが存在しています。
現在も人が住んでいるので、中を見ることは出来ませんが、
あの「トキワ荘」の方はすでに取り壊されている事を考えれば、外観だけでも貴重。

同様に並木ハウス詣でしている、マンガファンと思われる方々がいました。

法明寺

雑司ヶ谷に来たら、やはり鬼子母神詣でをしなければ!
ケヤキ通りを抜けた所を左に曲がると、すぐにありました。
法明寺鬼子母神堂。

ちなみに、鬼子母神と書いて「きしもじん」と読みます。

この付近、やたらオシャレで綺麗な女性が歩いているので、
谷中のように人気沸騰中なのかなと思ったら、
この右手を行った所にある、東京音楽大学の学生さんのようです。

鬼子母神堂

鬼子母神はインドで訶梨帝母(カリテイモ)とよばれ、
夜叉神の娘で性質は暴虐この上なく、
近隣の幼児をとって食べるので、人々から恐れられていました。

お釈迦様が、その過ちから救う為に、
訶梨帝母の子を隠してしまったのですが、
そこではじめて今までの過ちを悟り、
その後安産・子育の神となることを誓ったとされています。

看板

鬼子母神像は、鬼ではなく、幼児を抱いた菩薩の姿をしているので、
漢字も鬼ではなく、角(つの)のつかない鬼の字が使われています。

いちょう

境内には、高さ30メートル、周囲8メートルという大銀杏があり、
これは、麻布善福寺につぐ都内で2番目に大きな木で、
都の指定天然記念物にもなっています。

駄菓子屋

駄菓子屋さんの「上川口屋」もあるのですが、
何と、創業は1781年で、現在十三代目。
代々女性が店を継ぐのが決まりなんだそうです。

お団子屋1

お団子屋さん隣のベンチでは、小さなドラマがありました。

女子高生2人と、男子一人が仲良く境内に入ってきました。
歩いているときは、まだ3人とも同じ距離感で、
恋には発展してなさそうな感じだったのですが、
ベンチに座る時に、男のコは真ん中ではなく、端っこに。

最初は、3人とも等間隔で座ったのですが、
次第に、男のコと隣の女の子が盛り上がり、寄り添うように。
そして、女の子と女の子の間に、少し距離が出来てしまったのでした。

たった15秒から20秒ぐらいの間の出来事なんだけど、
構えていたカメラの液晶モニターの中で、
そんな小さなドラマが繰り広げられたのでした。

雑司ヶ谷霊園

この鬼子母神から自転車で5分ぐらいの所に、雑司ヶ谷霊園があります。

地図

有名人のお墓参りをする人を「墓マイラー」と呼ぶそうなのですが、
雑司ヶ谷案内処でもらったパンフレットにも、有名人のお墓マップが。
確かに、この地図を持って歩いている人と、何人もすれ違いました。

この地図は、お墓の管理事務所でも無料で配っているので、
こうして訪れる人、多いんでしょうね。

夏目漱石

こちらは、文豪・夏目漱石のお墓。
正面からだとわかりにくいですが、椅子のような形をしています。
これは奥様が、日本の墓でも西洋の墓でもない形にしたいという事で、
安楽椅子をイメージしたデザインなんだとか。
変わったデザインのお墓の走りですね。

この他、永井荷風、小泉八雲、金田一京助、サトウハチロー、
竹久夢二、ジョン万次郎などのお墓もありました。

文豪達のお墓をめぐりながら、手を合わせ、
少し文才を分けて頂けないかと、お願いしてみたりしたのでした。

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