カヤバ珈琲(日暮里)

谷中霊園

禁断症状というのは、タバコやお酒に限った事ではなく、自分に足りない物の割合が増えると、無性にそれを欲したくなる衝動が湧いてくるような気がします。

例えば、たまに無性にケンタッキーフライドチキンが食べたくなる事があるのです。普段は和食が中心であっさりした食事が好きなハズなのに、指を脂まみれにしながら、あのスパイスたっぷりのチキンをむさぼるように食べたいという気持ちをこみ上げてくる事があるのです。

それは食べ物だけでなく、風景でもあります。海育ちのせいか、海はもちろんの事、川や湖、沼や池などたまに無性に水辺が恋しくなる事があります。

今回、谷中、根津、千駄木というあたり、通称「谷根千」というエリアに足が向いたのは、たぶん自分の中で、ビタミンやカルシウムみたいに、こういう古い町並みという要素が、最近不足していたのかもしれまません。

看板

日暮里駅から谷中に抜ける通り沿いに「谷中霊園」があります。有名人のお墓が数多くあるのですが、一番有名なのは徳川最後の将軍、徳川慶喜候のお墓。

徳川慶喜の墓

官軍との戦いを思わせるような槍型の鉄柵に囲まれていて、直接お参りする事は出来ないのですが、それでも多くの墓マイラーがいました。門には「この紋所が目に入らぬか」でおなじみの、葵の御紋が。これを目にすると「はは〜」とひれ伏したくなるのですが、実際に「徳川プレイ」とか、やっている人いるのでしょうか?

長屋

この界隈は、とにかく大小の神社仏閣が多いのですが、江戸の長屋を想像させる建物も数多く残っています。落語の「熊さん」とか「八っつあん」とかが住んでそうな佇まい。夏とかに軒先で風鈴とか鳴ってたら風情がありそうですね。

スカイ・ザ・バス・ハウス

こちらは銭湯ではなく、廃業した銭湯をリノベーションしたアートギャラリー SCAI THE BATHHOUSE(スカイ・ザ・バス・ハウス)。乗っていった自転車とコラボさせてみました。今回乗っていったのは「青い稲妻号」の方です。

下駄箱

入り口は銭湯の佇まいなのですが、中は別世界。

作品が展示されていたので、写真は撮れなかったのですが、壁が全て白く塗られ、吹き抜けで天井も高いので、作品の配置によって、面白い空気を生み出せそうな空間。この日は、一つの壁に複数飾らず、あえて大きな作品を一つだけ。それが逆に作品の存在感を高めていました。

下町風俗資料館

言問通りまで来ると、不忍池のほとりにある下町風俗資料館の付設展示場旧吉田屋酒店があります。実際に谷中で営業していた酒屋の建物を移築したもので、明治43年に建てられたものです。

内部

中も酒屋さんが再現されていますが、営業している訳ではなく展示用。でも、今こういう酒屋さんがあったら、逆にオシャレだと思いますけどね。

カヤバ珈琲

さて、その旧吉田屋酒店の向かいにあるのが、今回の目的地「カヤバ珈琲」。建物は、大正5年築の町家です。

実は1回去年の夏に来たのですが、その時は満席で入れなかったので、そのまま坂を下って鶯谷のデンに行ったのでした。なので、今回はリベンジ。

看板

この地で昭和13年から70年近くカヤバ珈琲は営業して来たのですが、お店を運営していた娘さんと奥様が立て続けに亡くなられ、閉店する事に。それを惜しんだ人達が、親族や街の人達と相談し、NPO法人を立ち上げて、お店を復活させたのです。

店内

店内は、昔の雰囲気を壊さないようにしながら、少し現代に合うようにリノベーション。いい味が出ています。

二階

ちょうどお客さんの切れている時だったので、これはチャンスと店内撮影の許可をお願いすると、「よかった二階もあるので見ていってください」と言ってくれました。

二階は畳敷きの和室。こちらも風情がありますね。

畳の所にガラス敷きのところがチラリと見えますが、あそこから一階を覗けるようになっていました。

タマゴサンド

お店を復活させるにあたって、メニューにも復活させたのが、以前からの名物であった「たまごサンド」。こちらはランチセットで、スープ&サラダに珈琲がついて、900円。

たまごサンドは、ゆで卵をつぶしたものではなく、玉子焼きを挟んだものです。普通のたまごサンドより、かぶりついた時に弾力があり、それが口の中でちぎれるときに、玉子の甘みがふわっと広がります。

おいしい!
なぜ、こういう「たまごサンド」に他でお目にかからないのでしょう?ゆで卵をつぶしてマヨネーズと和える物と皆思い込んでしまったのでしょうか?「コロンブスのたまごサンド」と名付けたくなるような、新鮮さがあり、もう一度食べたいと思わせる味です。

なんか「かもめ食堂」のフードコーディネイターの飯島奈美さんとかが作りそうな感じですね。素朴なんだけど、温かみのある、そんなメニューです。

昔の写真

白黒の写真ですから、昭和の最初の方でしょうか?かつてのお店の写真と、当時使われていたであろう秤が飾られていました。

コーヒー

谷根千とカヤバ珈琲で、自分に欠乏していたと思われる「古き良き」を補充。古民家カフェって、ホント、古さと上手に付き合ってますね。このお店で過ごしながら思ったのですが、懐古趣味だけでもダメだし、先人が「故きを温ねて新しきを知る」と教えてくれているように、今、何が足りないのか気づく事が大事なんだなと思いました。

整体って体のバランスを整えるけど、傾いている指向性もたまにはバランスとらないと。…と思ったのでした。

■カヤバ珈琲
■東京都台東区谷中6丁目1-29
■営業:8:00〜18:00
■定休:月曜日(月曜が休日の場合は、翌火曜)
場所はこのへん
お店のサイト

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喫茶・デン(鶯谷)

目白駅

江古田から東長崎を抜けて、目白通りを進みます。チャリで23区のカフェ制覇の旅でも、たびたび使う通り。目白駅を越せば通りも少し広くなるし、交通量も減るので比較的走りやすい通りです。

不忍通り

不忍通りを進み、護国寺を抜けると少し長い上り坂となります。その上にあるのが春日通りとの交差点。いつもはここを右折して、本郷や上野方面に向かうのですが、今回は、このまま直進。

自転車レーン

千石から白山通りに入り、さらに旧白山通りに入ると、自転車専用のレーンが出現。こちらは、国道としては東京都内初の自転車レーンだそうで、2010年の3月26日からスタートしたものです。

実は最近、少しずつですが、こういう自転車レーンが増えているのです。江戸川区を走った時も、このように自転車レーンが色違いで塗られていましたが、足立区を走った時は、白線のみで、所々に「二輪」の文字がありました。ただ、まだドライバーにはあまり知られていなくて、ただの路側帯と思われている事も。

このように色が塗り分けられていると、車が中央側を走ってくれるので、自転車も安心して走ることが出来ます。それに駐車違反の料金が上がったせいでしょうか、昔に比べれば圧倒的に違法駐車が少なくなりましたしね。

本郷

本郷に入ったら、東大農学部と安田講堂の間の言問通りに入ります。ギラギラの太陽が照りつける日は、こういう木陰のある所に入ると、ぐっと涼しくなり、気持ちいい風も感じることが出来ます。うちの近所の中野通りも、桜並木の緑がトンネルのように日差しを防いでくれるので、気持ちよく走れるので好きな通りです。

自転車旅だと、坂のアップダウン、交通量、路側帯の幅、舗装、自然、道路の色んな事が気になり、それが総合されて自分の好きな通りというのが生まれます。

旧・吉田屋酒店

言問通りを根津から谷中へ向かうと目に飛び込んできたのが、上野公園にある下町風俗資料館の付設展示場である、旧・吉田屋酒店。実は、当初、今回の目的地は、この付近でした。谷中は、カフェ本に取り上げられたりするお店の多い、カフェの宝庫なのですが、土曜日という事もあってか、街を散策する観光客でいっぱいで、当然、カフェも満員御礼。なので、この場所はあきらめ、言問通りをさらに直進する事にしました。

谷中付近は、古い町並みが残り風情があるのですが、実は若い店主が多いらしく、古い建物を生かしながら、若い人達にもうけるコンセプトのショップが多いのも特徴です。

たとえば、この旧・吉田屋酒店でも音楽が流れていたのですが、写真から想像して、どんなのが流れていたと思います?江戸情緒の残る下町といえば、お囃子とか、民謡とか、そんなイメージじゃないですか?

実はカフェミュージックだったんですね。

未だに多くの商店街では、年配者が実権を握っているために、若いお客のニーズに合わず、ただ古いだけになってしまう事が多いのですが、この付近は、並ぶお店や散策するお客さんなどをみても、旨い具合に世代交代出来ているのが、感じられます。

若いって言っても、中心は30代〜40代ぐらいでしょうかね。商店街では50代でも若手。60〜70代が中心ですものね。

陸橋

陸橋を使って、山手線、京浜東北線を越えていくと、スカイツリーが見えて来ました。ここの陸橋も自転車部分は緑に塗り分けられているので、安心して走れます。

デン

根津、谷中付近から予定を変更してやってきたのは、鶯谷付近の根岸周辺。このあたりも古い町並みと新しい町並みが融合する場所です。

ここで選んだのは、こちらの「喫茶・デン」。

グラパン

お目当てはこちらの「グラパン」。食パンをくり抜いて、ホワイトソースのグラタンを入れた物で、具は、エビ、ハム、ホタテの中から選べるので、エビをチョイス。ドリンク付きのグラパンセットは、980円です。

カラオケボックスなどで、食パン一斤を使い、ハチミツやアイスクリームを乗せたハニートーストにお目にかかることがありますが、こちらはグラタン。しかも、ハニートーストの場合は、みんなで食べる事がが多いので、これを一人で食べきれるのか多少不安がよぎったのですが、食べ始めると、意外といけます。

徐々にパンにグラタンが染みこんできて、しんなりしてくるので、そこをちぎりながら、食べていきます。そして、完食。

クリームソーダ

満腹になり、まったりとしていると、ご近所の常連さんらしき人が来店し「いつもの!」とご注文!すると出てきたのがコレでした。

見たらメチャメチャ食べたくなり、デザートは別腹と言い聞かせ、注文する事に。だって、今逃したら、次にいつ来れるかわからないんだもん。

クリームソーダは550円。こちらはソフトクリームも人気のお店らしく、濃厚なソフトと、ちょっと懐かしい感じのソーダがいい具合にマッチしてます。これ、美味しい!

カフェというよりは、地元の人達に愛される喫茶店という感じ。お客さんの中には、お婆ちゃん達の茶飲み友達チームもいらして、救急車が通ったら「ほら!お迎えが来たよ」なんて、綾小路きみまろさんチックなギャグを飛ばしていました。

■喫茶・デン
■東京都台東区根岸3-3-18
■営業
9:00~22:00(月〜金)
9:00~19:00(土日祝)
■定休日:不定休
場所はこのへん

謎の洋館

デンのすぐ近くの路地を入ると、不思議な建物が見てきました。家が蔦にすっぽりと覆われています。かなり古い歴史のある建物のようですが、特に案内などは書かれていません。

後で調べてみると、どうやら、陸奥宗光の別邸だった場所らしいです。幕末、勝海舟の神戸海軍操練所に入り、坂本龍馬の海援隊に加わるなど、始終龍馬と行動をともにした人で、大河ドラマの「龍馬伝」では、平岡祐太が演じている人です。

明治時代には外務大臣として辣腕をふるい、カミソリ大臣の名で呼ばれた人。明治20年頃に三井家からこの家を贈られ、別邸として使っていたそうです。

現在は、別の人の手に渡り個人の所有物になっているようです。一見廃墟風になっているのですが、個人では維持するのは大変なんでしょうか。

看板

さて根岸と言えば、近くにあったハズ。ねぎし三平堂。初代・林家三平さんの実家であり、記念館でもあります。

三平堂

二代目・林家三平さんは、次男である「いっ平」さんがが継いで、長男の「こぶ平」さんは、九代目「林家正蔵」さんへ。お二人が出られる番組では、たびたびこちらのご実家も登場しますね。

鬼子母神

帰りは、入谷から上野方面に向かったのですが、入谷といえば、朝顔市でも有名な鬼子母神があります。正式名称は、真源寺(しんげんじ)。江戸の三大鬼子母神の一つされ「おそれ入谷の鬼子母神」という狂歌の中の洒落も有名ですね。

社殿

歴史のある寺院という事で、ワクワクしながら入ってみたのですが、すっかり近代的になっていて、少しガッカリ。

山車1

その後、上野公園の脇をすり抜けて帰ることにしたのですが、ちょうど上野公園の夏祭りが行われていて、山車が待機していました。

山車2

その他にも、猿の山車と…。

山車3

狐の山車が待機していたのですが、猿と狐で何のお話でしょうか?もし桃太郎だとしたら、狐ではなく犬ですが、そうなるとキジが足りません。さて、いったいなんの山車なんでしょう?

不忍池

不忍池で、ちょっと夕涼み。屋台も数多く出ていて、ビールを楽しんでいる人も多くいました。ちょっとしたビアガーデン風。

入道雲

ビールをぐっとガマンしてペットボトルの水を補給していると、ビルの向こうに、大きな入道雲がもくもくと。まるで、爆弾が投下されたあとの、きのこ雲のよう。みるみるうちに大きくなっていきます。もしや、これは一雨降るのでは?ゲリラ豪雨?

早々に上野を後にして、帰路についたのでした。

自転車で23区カフェ制覇の旅…ただ今、14/23区。

地図

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