人生フルーツ

ポレポレ東中野

ミニシアターのポレポレ東中野へ。「人生フルーツ」という映画を観るためにやってきました。2017年の1月2日に、ここで公開がスタートし、今も上映が続いている大ロングランの作品です。

日本住宅公団のエースだった津端修一さんは、阿佐ヶ谷住宅や多摩平団地などの都市計画に携わってきました。1960年代、風の通り道となる雑木林を残し、自然との共生を目指したニュータウンを計画。愛知県春日井市の高蔵寺ニュータウンでは、経済優先の方針で、設計を覆らされ、建物が無味乾燥敵に立ち並ぶ、団地に変更されました。そこで、その団地に土地を買って家を建て、雑木林を作り、自然に寄り添う暮らしを続けて来た…というドキュメント。

たぶん、スローライフの勧めみたいに取る人もいれば、リタイア後の、充実した人生の送り方と取る人もいるし、夫婦のあり方とも取れるし、オーガニックなグルメレシピなど、いろんな見方が出来る映画です。仕事のあり方などを話していた時に、オススメされた作品で、僕はその視点で見ていました。

終活をしていた自分の父親とオーバーラップする部分もありましたが、僕が感動したのは、リタイヤした生活のようにみえて、感性が、全くリタイアしていないどころか、磨きあげられていた事です。建物が建ち並ぶ、巨大な団地の時代から、自然に囲まれたニュータウンを売り物にする時代になりましたが、何年も前から、その本質を見抜いていた事。かと言って、自分の考えや経験を押しつける訳でもない。自分の出番が来るまで、じっと静かに暮らしています。

モーレツ社員が賞賛される時代から、やっとブラック企業とやらが、否定される時代になりましたが、経済効率優先から、こぼれてしまった人達を救う施設を作る時、白羽の矢が立ったのは、昔から、自然と共生し、心豊かな生活を提唱していた津端さんでした。相談されてから、たった2〜3日のあいだに、施設全体の構想や、設計方針などをスケッチに描き上げてしまいます。リタイヤした生活に見えて、全くリタイアしていませんでした。

自分自身、感性が鈍らないようにと言い聞かせて、流行を追いかけたり、トップダウンに合わせるように、安全な石を置きに行ったり、まわりに合わせすぎて、人生ブレブレですが、こういうブレない人生を見せて頂き、猛省している所です。

感性が鋭いというのは、流行を追うことだけではなく、そのものの本質をきちんと見極められるという事なんだなあと、自分の邪道さ加減が浮かび上がり、軽く落ち込みました。反面、自分の経験、積み重ねを信じすぎ、新しいアイディアが生まれないのも、ダメなんだなあと。

ラジオに当てはめながら、考えていたら、わかりやすい例で浮かんだのは、意外にも紅白歌合戦でした。若者に媚びへつらいすぎてもダメ。年配の人に合わせて、懐かしソングだけ並べてもダメ。じゃあ、どうする?簡単に答え出ないよなあ。どうなるんだろう?今年の紅白歌合戦は?と、自分の答えも出ていないのに、他人の心配をしています。

赤いマウンテンバイクに颯爽と乗って毎日、葉書を持ってポストに向かう、津端さん。その宛先はお世話になっている、いろんな人で、例えば、魚屋さんに、今日はこんな風にして食べて美味しかったよと、イラスト入りで、報告したり。やっぱり、自転車はいいなあ。こんな風にいつまでも乗れるといいなあ。

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