デイジー

『僕の彼女を紹介します』のチョン・ジヒョン、
『私の頭の中の消しゴム』のチョン・ウソンがオランダを舞台に魅せる、
美しくもせつないラブサスペンス。
監督は『インファナル・アフェア』のアンドリュー・ラウ。

画家の卵ヘヨン(チョン・ジヒョン)には幻の恋人がいた。
山間の村で絵を描いていた夏から、匿名でデイジーの花を届けてくれる人だ。
ある日肖像画の客として現れたジョンウ(イ・ソンジェ)こそがその人と確信し、
恋に落ちるヘヨン。しかし本当の贈り主は…。

韓国版のレオンのような要素を持つ映画。
脚本が良く出来ていて、一つの出来事が3人のそれぞれの視点から見ると、
少しずつ違って見えるというズレが、ドラマを生んできます。

舞台は自転車大国であるオランダだけに、普通の風景の中に自転車がふんだんに出てきます。

オープニングから主人公は自転車に乗って花畑へ。
画材を自転車に積んで、いろんな場所に出かけます。
ロードレースみたいな自転車映画ではありませんが、
自転車好きが見れば気になるポイントがいくつも。

チョン・ジヒョンが乗っているのはママチャリ系だけど、カゴではなく、
後ろの荷台の所にキャンバス制の袋がついていて、
そこに画材などを積み込むタイプ。
日本でも、こんな風にした方が可愛いかも…と参考になったり。

男の家に置かれている自転車が、
細めのクロモリフレームで、変速機のレバーがフレーム側についているクラシカルなタイプ。
こちらは自転車好きな男心をくすぐります。

そしてカフェ好きにもたまらない映像も。
チョン・ジヒョンが似顔絵かきのアルバイトをしている場所は、
旧市庁舎や教会など古い建物が周りを囲む、マルクト広場なのだけど、
ここにはカフェがいくつかあり、広場に置かれたオープンの座席では、
お茶を楽しむ人達の姿が。

そして、チョン・ウソンがチョン・ジヒョンを連れて行く古いカフェ。
ここは「カフェ1900」と言って、名前の通り1900年創業の歴史を誇るお店なんだそうです。

さらに、チョン・ジヒョンの祖父が経営していて、
彼女が店の手伝いをしながらいっしょに住んでいる骨董品店。
アンティークショップには、カフェマニアが気になる家具や小物がズラリ。

こんなロケーションの中で、お話はよく出来たサスペンス、そして純愛。
直接自転車、カフェが題材となった映画ではありませんが、
カフェ好き、自転車好きに自信を持ってオススメしたい映画です。

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おくりびと

言わずと知れた、第81回アカデミー賞外国語映画賞 、
第32回日本アカデミー賞最優秀作品賞受賞作品。

遺体を清め棺に納める納棺師として働くことになった主人公の成長と
周囲の人々の人間模様を綴る作品。

数多くの賞を取っただけあって、素晴らしい映画でした。
納棺師という耳慣れない設定意外は、芝居もリアルで淡々と。
シンプルなストーリーながら、抑えた山崎努さんと本木雅弘さんの演技が
ジワジワと感動を引き出してくれます。
納棺師の所作も美しい。

こんな素晴らしい作品を今頃になって観て、
しかも喫茶店が舞台だと聞いて観た…というおかしな理由。

そんな変な人の戯言だと思って、ここからは聞き流してください。
石川遼君の、聞き流すだけで英語が学べるスピードラーニングではないので、
記憶する必要もありません。

ストーリーとか演技にひたっていると、
ちょいちょい集中力を欠かせるポイントがこの映画にはありました。
マニアックな人の視点という事で、許してください。
そして、公開後しばらくたちますが、ネタバレも含まれているのでご注意ください。

主人公はオーケストラの解散でチェロの道をあきらめて田舎に帰ってきた男。
実家は、母親が遺してくれたスナック兼住居ですが、
父親が愛人と逃げる前は、クラシックを中心とした名曲喫茶だったという設定。
クラシック好きの親がいて、そこからチェロの道へ進んだ主人公。

ここで最初のひっかかりポイント。
なんでクラシックなのに、スピーカーがJBLなの?

一般的なベタなイメージでいえば、JBLはJAZZ向きのスピーカーで、
クラシックならタンノイとか、他のイメージ。
もちろんJBLでクラシックを聴いてもいいし、
タンノイに異論のある人もいると思うけど、
観たときに、「わかりやすい」ぐらいにはなると思うのです。

まあ、JAZZもクラシックも好きだったお父さんに違いない。
だからJBLにしたんだと頭を切り換えて観ていると、またもや、ひっかかりポイントが。

父親は愛人を作って家を出て、母親はスナックをやりなが女で一つで息子を育てた。
でも、母親は最後まで父親の事が好きだったらしく、
父親揃えたレコードは全て残してある。

となると、オーディオシステムも父親が残した物となるのだろうけど、
例のJBLが、映画公開当時最新式の型番な訳ですよ。
まあ説明もないので、本木さんが新たに買い足したという逃げ道もある。
ただ!チェロを弾いてるシーンから、子供の頃の回想シーンに展開するのだけど、
他のインテリアや小物が、さらにタイムスリップして古めかしくなるのに、
スピーカーだけは同じ最新式の4318だよね。
時代考証的に、どうしても合わない。

納棺師物じゃなく推理物だったら、最後に船越英一郎さんが崖の上で、
「騙したつもりだろうけど、オヤジさんから貰ったというスピーカー。
 あの時代には製造されてなかったんだよ」
と言わざるを得ない感じなのです。

ここまで来たのでついでに言うと「お父さんの好きだったレコード」をかける
プレーヤーは、クラブなどで使われるテクニクスの物だと思う。
ヒップホップのDJ用ですよ。
間違ってたらごめんなさい。

まあまあ、映画なんだし、そこまで気にしなくてもいいじゃない。
…と自分も思い込もうとしたのですが、
最後まで観れば、父から子へのメッセージ、子供に残した物というのが、
最大のテーマではないですか!
しかも、それをつなぐ物が音楽。

だったら、やっぱり父の時代に一世を風靡した古いスピーカーやオーディオシステムで、
父の好きだったレコードを聞いて欲しかった。
と、マニアックな視点でいうとそう思った訳です。

映画賞総なめのこの映画、
日本アカデミー賞では、美術賞も受賞しています。
審査するときに時代考証が間違っていると
異論を唱える人はいなかったんでしょうか?
まあ映画界的には、そういう所は、気にするポイントじゃないんでしょうね。

でも気になる。
てな訳で「おくりびと」+「JBL」とかで検索してみると、
オーディオマニア達が同じような違和感を訴えていました。

だよね!

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