銀輪の巨人

本を電子ブックで読み始めています。
マンガ「のりりん」に続いて、AmazonのKindleストアからダウンロードして買ったのは、
「銀輪の巨人」

自転車メーカーとして世界最強のポジションに昇り詰めた台湾の「GIANT」。
フレームの世界シェアをほしいままにし、
世界最高峰の自転車レース「ツール・ド・フランス」でも実績を残す。
何故、台湾の1メーカーが自転車業界で世界のTOPに立ったのか。
それを取材した本。

その昔ブームになった「プロジェクトX」。それの自転車版を読んでいるようでした。

品質が悪い。
模倣の商品ばかり。

今、僕らが中国製の商品を見て思う感想。
30年〜50年前は、アメリカで日本製品の事をいう台詞でした。

そのレッテルを、独創的な製品と、高品質を売り物に、
覆していったのも、日本製品。

その時期、そういうエピソードを調べまくって、
プロジェクトXヲタクとも言われるぐらいだったので、今も覚えています。

●家に置いて聞くラジオを、シャツの胸ポケットに入るぐらい小型化した
 SONYのTR-63トランジスターラジオ
●ポルシェの5分の1の値段で買える高性能スポーツカーという事で、
 世界一売れた日産フェアレディーZ
●世界一厳しく、パスすることは不可能とまで言われたアメリカの排ガス規制法を、
 世界で最初にクリアしたホンダのシビック。

この「銀輪の巨人」を読んでいると、
「粗悪品」のレッテルを貼られていた「台湾製」を、
いかに独走的な製品作りと高品質で、評価を覆していったのか、
SONYの井深大やホンダの本田宗一郎がいた頃の
日本企業とオーバーラップする部分があります。

一方、一時期隆盛を極めたものの、
半導体、PC、家電、携帯電話、
日本企業は凋落の一途を辿っています。
それをいち早く体験しているのが、日本の自転車産業です。

安さを求めて生産拠点を中国に移したものの、
技術を習得された所で、中国製ブランドを立ち上げられ、価格競争に敗れる。

今、日本で売られている自転車の8割以上が中国製です。

GIANTも中国に生産工場を持つけれど、
早い段階でその危険性を察知し、路線を変更します。
ママチャリの低価格路線では勝負出来ないなら、
ロード、クロス、マウンテンバイクというスポーツ自転車で勝負しようと。
そちらは国内に拠点を置く。
そして、そういう需要を作る為に、自転車ブームを巻き起こそうと。

ジャイアントのTOPである劉氏は70歳を越えてから
台湾一周1000kmを走破しています。
自社の旅行代理店まで作り、手ぶらで観光地まで行って、
サイクリングが楽しめる、ツアーまで作っているのです。
そして台湾にスポーツ自転車とサイクリングという文化を創り出しました。

結果、GIANTは世界で一番の自転車メーカーになりました。
そして、今では、イタリア、フランス、アメリカの
みんなの憧れのメーカーのエントリーモデルは、
このGIANTからフレームがOME供給されるまでとなっています。

ここからは、僕個人の感想です。
日本の自転車業界が、ママチャリのシェアを奪い返す事は不可能で、
チャンスがあるとすれば、5万円前後のスポーツタイプのエントリーモデルだと思う。
しかも女性向け。
ここには、GIANTのESCAPEというモデルがすでにガッチリと食い込んでいるけど、
まだまだチャンスはあるように思います。

女性タレントやモデルさんなどから自転車の相談を受ける事があります。
「都内を軽快に走れて、予算5万円ぐらい」
買い物や打ち合わせで青山あたりまで行ったり、
休日に多摩川まで行ったり。
ママチャリだと渋谷あたりの坂を登るのが大変だし、
電動アシストだとバッテリーが切れるのが心配で遠出出来ない。
だから、スポーツタイプの走る自転車が欲しい。
というオーダー。

エスケープ

となると、GIANTのESCAPEが第一候補になるのだけど、
写真を見せると、ゴッつすぎてヤダと言われる事が多いです。
(注)あくまでも彼女達の視点ですよ。
僕の友人もESCAPEに乗ってる人、何人かいるし、いい自転車だと思います。

TOKYOバイク

いろんな条件を言われて、ipadで写真を見せて、
「あ!これいいかも」と言われたがこちら!
tokyo bikeのBISOU 26。

tokyo bikeのサイトで、そのコンセプトを見たら、納得。

山を走るのが「マウンテンバイク」なら、東京を走るのが「トーキョーバイク」
スピードを出すことよりも、踏み込んだ瞬間の軽さや、
上り坂をすいすいと上れる気持ちよさ。
言い換えれば自転車を意識せず風景や空気の匂いを感じるためのデザイン。
坂道専用の軽いギアを装備しているので、
急な上りですらゆっくり楽しみながら走ることができます。
BISOU 26は、スカートで乗れる点も女性にはうれしい仕様。

ビアンキ

ちなみに、正月にプロンプトンという小径車で、
東京から九十九里まで初日の出を見に行った女友達。

プロンプトンだと坂道に弱いので、もっと気軽に街乗り出来て、しかも走るヤツ。
…ともう一台買ったのが、こちらのビアンキでした。

どこか共通した雰囲気あるよね。

ママチャリよりオシャレで、上り坂でも軽く登れる。
スポーツと街乗りの中間。
そういう所に潜在的な需要がある気がします。

自転車業界って、いきなり女性をロードバイクに乗せようとしたがるけど、
ママチャリのひとつ上のステップ、ポタリングはあまり力入れてない。
だけど、女性のやりたい需要があるのは、断然こっちでしょ。
カメラ女子、お散歩女子、カフェ好き女子、
そういう人達と、少し走れる自転車って相性いいと思いますよ。

gios

ちなみに、このGIOSに乗っている時は、
「その自転車だから行けるんでしょ。私には無理。」
…って言われる事が多かったのですが、

KHS

こちらのミニベロKHSにしてからは、
「私の自転車でも行けますか?」
と聞かれるようになりました。

小さくても結構走る自転車もあるという事。
ミニベロでも23区レベルだったら楽々走れるという事、
もっと啓蒙していこうと思います。

何軒かのカフェのオーナーさんに言われたんですよ。
「チャリカフェで見た」って言って、自転車で来る人が増えたって。

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のりりん

ipad

本が場所を取る問題で困っていたのでお気に入りのムック本は、スキャンしてipadに取り込んであります。

なので、電子ブックに非常に興味があるのですが、amazonのKindleストアがオープンしたので、Kindleストアで買って、ipadのKindleアプリで読むという事を始めてみました。PCから買っておくと、ipadアプリを開いたときに自動でダウンロードしておいてくれます。

で、最初に買ったのが、このマンガ。「のりりん」。

自転車乗りを頑なに拒む青年・丸子一典が出会ったのは、キュートな女子高生ロードレーサー・織田 輪。ひょんなことから免許取り消しになってしまった丸子に、彼女は自転車に乗ることを勧めるが……。

1〜3巻までは、免許取り消しから自転車に乗ることになり、それをきっかけにロードバイクの魅力に気づくという話。

自転車を知らない人にとっては、普通のマンガとして読めると思いますが、ちょっとかじっている人間からすると、この作者、かなりマニアックだな…という印象。

初心者である丸子一典は、ひょんな事からロードバイク経験者とが勝負する事に。そこで、女子高生ロードレーサー・織田輪のママは、丸子の為に秘密兵器を持ち出す。

女子高生「輪」のママっていうのが、このマンガの中で一番の自転車オタク。そのママが持ち出してきたのが、この自転車。

チータ

Cat Cheetah(チータ)。スイスの手作りメーカーCatのフレームで、女性トップ・トライアスリートのナターシャ バドマンの愛車である事から、トライアスロン界では有名なモデルです。

ただ、ロードレースの方では、UCIの規定に反しているので使用できず、レースでは使えないという車両。UCIというのはUnion Cycliste Internationale:国際自転車競技連合。

ロータス

これに似た自転車で、ロータスのフレームがあるのだけど、(マンガにも登場)クリス・ボードマンがこのロードバイクに乗り1994年ののツールドフランスのタイムトライアルで記録した平均時速55.152 km/hは、ツール史上における歴代最速記録で、現在も破られていません。

さらに、ボードマンは、1時間にどのぐらいの距離を走れるか、トラックを周回する「アワーレコード」という競技で、1996年9月7日、56.375kmをマーク。こちらも、今も破られていません。

ところが、UCIは後で勝手にレース車両の規定を変更し、それにあてはまっていないこれらの車両で作った記録を全て無かった事にしてしまっています。

マンガの方では、

UCIでは無かった事にしているけれど、今でも記録は破られていないのだから、当時の車両の方が実は速い。素人の対決だからUCIの規定は関係ないし、だから秘密兵器として登場させた…

というストーリー展開。

スピードが出すぎという理由で制限された規定で作られている現在のロードバイク。エアロフレームだ、電子式シフターと進化しているように感じるけど、また、当時の何でもありだった頃には未だに追いついてないのが現状。最新式のバイクに、ウィギンスやカンチェラーラが乗っても、まだ当時の記録には追いつけないのだから。

このマンガ、皆が知らない、その辺のいきさつを引っ張り出して、ウンチクが語られるのだけど、ちょっぴり説教くさい。

マンガの中では現在のフレーム規定の事を「去勢されたロードバイク」と、呼んだり、乱暴な言葉遣いの登場人物が多かったり、あえてカチンと来る演出も多く、美味しんぼの雁屋哲みたいな所もあるので、その辺の好みは分かれる所でしょう。

まあ、その辺のウンチクをスルーしても普通に読めるマンガなんだけど、あちこちに散りばめられたウンチクに引っかかりマニアックに読み始めると、マニアックすぎるマンガ。…って、オレ、完全に引っかかってるじゃん。

たぶん自転車競技に興味のない人は、このへんチンプンカンプンだと思うので、ウンチクはスルーで

自転車好きの女子高生と母親に、ロードバイクについて教えて貰いながら、古い自転車で、最新式のモデルに勝負を挑む

ぐらいで読めばOK。

作者はUCIの規定について、苦言を呈するような事を書いているのですが、この辺のいきさつを知りたい人は、この映画を観ておくといいでしょう。UCIの勝手な規定変更に振り回された選手の人生を描いたのが、実話を元にした映画「トップランナー」。

ボードマンと争ったグレアム・オブリーが主人公。

バイク便の仕事で生活費を稼ぐ毎日を送っていたオブリーはある日、ライバル選手がアワーレコードに挑戦することを知り記録更新への挑戦を決意。1993年独自のスタイルで見事アワーレコードの記録を更新。しかしそんな彼の活躍を面白く思わない競技連盟幹部の面々は彼を自転車競技会から追い出す為に理不尽なルールをかかげ始める。

僕が以前に観た時に書いた感想はこちら

余談ですが、今年のツールドフランスで、マイヨジョーヌを獲得したウィギンスはアワーレコードに挑戦したオブリーのライバル、ボードマンに憧れて自転車に乗りはじめのちに、自分のコーチとして迎えています。

litespeed

しかしこのマンガ、普通の自転車がほとんど出て来ません。だって、4巻以降で、自分の自転車を作るために、フレームを探してもらうのだけど、その時にもって来られたのがコレ。

LITESPEEDのBlade。コレ見て「ああ!」という人は、かなりのマニアック。

アームストロング

あのランス・アームストロングが、1999年のツールドフランスで、3回あったタイムトライアルで、3回ともぶっちぎりで勝った時のフレーム。大人の事情で、トレックというペイントになっているけど、ファンの間ではLITESPEEDのBladeである事は、周知の事実。

探したら動画があったよ。まあ、ドーピング疑惑で、ランスの記録も無かった事になっちゃったんだけど…。

P.S
4巻〜5巻は、フレームを買って組み立て、ツーリングへ出かけるというHOW TO 風になっているのだけど、登場するフレームは、かなり作者の好みやこだわりが偏っているので、あまり参考にしない方がいいと思います。タイヤも700Cじゃなく、650Cにしちゃったりしてるしね。

ケストレル

P.S
のりりんの愛車と同じケストレルに乗っているご主人がいるお店が、常盤台のcafe aricaです

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