ツールドフランス2010

鉄道ヲタクと一口に言っても、撮り鉄、乗り鉄、音鉄、車両鉄、駅弁鉄と
いろいろ好みが分類されているように、
自転車好きも、割と細かに分類されています。

速く走るのが好きなロードレーサー(ローディー)、
山道を登るのが好きなヒルクライマー、
アウトドアのマウンテンバイクやシクロス
ひたすら長距離の挑戦するロングライダース
お散歩系が好きな、ポタリング、
自転車を現地まで運んで旅する輪行、
ファッションとして乗るピスト系、
ワゴン車のように荷物を積んで遊びに出かけるロングテール、
などなど、結構、好みは細分化されていて、
さらにカーボンが好きな人とか、クロモリ(鉄)しか認めんという人とか、
それこそ、自転車の好みは、十人十色。

そんな自転車の楽しみ方の中で、僕が最近、夢中になっているのが、
自転車レースを観ること。
特に、今までよく知らなかったツールドフランスのDVDを集めて、お勉強中です。

まず、頭に入れて欲しいのは、自転車のロードレースは、
個人戦ではなく、チームによる団体戦だという事。

そしてその中には、マラソン的な楽しみと、F1のような楽しみ、
競馬的楽しみ、プロレスのタッグマッチのような楽しみなどがあります。

今回は、ちょっとマニアックですが、ご容赦を。

今回買ったのは、ツールドフランスの2010年。

いくつかあるステージの中で、平地でのレースは、
競馬的な楽しみ、F1的な楽しみ、プロレスのタッグマッチ的楽しみがあると思います。

まずは、170㎞前後のステージを戦うにあたって、
競馬でいう所の逃げ馬的に、逃げで戦うのか、追い上げて差すのかという
見所があります。

そして、F1のように、スリップストリームに入って引っ張られる事で体力を温存し、
最後の勝負所で、すっと前に出てゴールするという見所も。

さらに、プロレスのタッグマッチのように、
エースを勝たせる為に、パートナーが相手を疲労させてたたきつぶし、
プロレスの3カウントみたいな、最後のおいしい所をエースに譲り、
スプリント勝負で勝たせるという見せ場も。

なので、ジャイアント馬場とジャンボ鶴田が組んだら最強とか、
猪木を勝たせるには、坂口征二なのか、藤波辰爾なのかみたいな、
エースとアシストの組み合わせの楽しみも。

2000年前後のランス・アームストロングとマルコ・パンターニが火花を散らしている頃は、
山岳コースが好きだったのですが、
2009年の、ツールドフランスを観てからは、
平地コースのスプリント勝負も好きになりました。

特に、HTCコロンビアというチームの
「ジョージ・ヒンカピー」「マーク・レンショー」「マーク・カヴェンディッシュ」の
トレインが綺麗すぎて、たまりません。
トレインというのは、後ろのエース(カヴェンディッシュ)を勝たせるために、
ヒンカピー、レンショーが風よけになりながら、チームで縦の列になって走り、
チームで、F1のスリップストリームのような状態を作り、
エースを引っ張っていく事を言います。

2009年のHTCコロンビアのトレインは芸術的すぎます。
それをまた観たいと思って買った2010年版は、
「ジョージ・ヒンカピー」が他のチームに移籍して、いなくなって、ちょっとショック。

だからチームでトレインを組んでも、
結構、間に他のチームの選手に割り込まれる事が多く、
あの芸術が観られないのが残念。

でも、アシストのレンショーと、エースのカヴェンディッシュのコンビは健在。
ここはプロレスのタッグマッチ的な楽しみです。

アシストは、ゴール前800メートルぐらい前から、
自分が先頭に立って、いいコースを確保して、
ゴール300メートルぐらいで、ヒラリと除けて後ろのエースに道を譲り、
ごっつあんゴールのお膳立てをするのですが、
これを自転車レースでは「発射」と言います。
だからアシストの事を、発射台と呼ぶことも。
このエースを勝たせるアシストの中で最強と言われているのが「レンショー」なのです。

レンショーは、ゴール前300メートルまで先頭で突っ込んできて、
そのまま自分が勝てるかのような勢いなのですが、
最後に、ヒラリとよけて、エースのカヴェンディッシュをパーフェクトに勝たせます。

レンショー

ところが、この2010年ツール・ド・フランス第11ステージのゴール前では、
ライバルチームが最後の最後に幅寄せして来た為に、
ブチ切れて、走りながらジャマした選手に、怒りの頭突を3発。
こうして、コースを守り、見事エースを勝たせました。

頭突きをしているのがレンショーで、
その後ろにいるのが、エースのカヴェンディッシュ。

ところが、この頭突きが違反行為となり、翌日にレンショー自身は失格に。

レンショー

協会は、頭突きしたレンショーが悪いと一方的に裁きましたが、
ファンの僕としては、相手がコースを塞いできたのも一因の気もしました。
上空からみると、エースはアシストであるレンショーの後ろにいるはずなのに、
幅寄せして来た影響か、相手チームの後ろにいます。
レースには進路妨害という判定もあるので、本人はこれを主張しましたが、
聞き入れられませんでした。

あくまでもこれは、僕がファンのレンショー側に立って書いています。
サッカーのワールドカップでも、
なんと差別用語を言われようと、頭突きしたジダンが悪いという事になりましたが、
ここでは、結果としてレンショーの退場で幕が下ろされています。

よく、格闘技以外のスポーツの事を、
「○○は格闘技だ!」みたいに言うけれど、
自転車のロードレースは、まさに、格闘技ですね。

以前、この動画は、You Tobeで人気を呼んでいたのですが、
ツールドフランスを仕切るフランスのスポーツメディア
Amaury Sport Organisation(ASO)からの依頼でことごとく削除されていて
今は観ることが出来なくなりました。

なので興味のある方は、DVDを探してみてください。

にしても、マニアックやなあ。
こういうのを語り合える男もなかなかいないのに、
女性にはどん引きされるでしょうね。
いたら、惚れる!

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東日本大震災から1年

宮古

東日本大震災から1年がたちました。
写真は我がふるさと、岩手県の宮古市が津波に襲われる瞬間。
黒い津波として世界的に有名になった映像です。

googleが選んだ2011年の出来事映像の冒頭にも登場します。

ニュース番組、震災特番、ブログ、ツイッターなどでで
「悲劇を繰り返さない為に」という言葉が連発されているけど、
少し疑問に思える所があります。

本当に、きちんとそういう意味合いを考えられて使っているのでしょうか?
ただのお題目になってやしないでしょうか?

田老

というのも、実は、我がふるさとは、これで4度目の津波です。
「想定外のはじめての出来事」なんて言葉も使われ、
まるで今回が初めてのように報じられていますが、
明治から昭和、平成にかけて、これで4度目の津波なのですよ。

写真は、僕らのふるさとでは、とても有名な場所。
岩肌に引かれている2本の白いラインは、過去にあった津波の高さを示す物です。

上が明治三陸地震の津波で、下が昭和三陸沖地震の津波。
2度の津波で、2度とも町は壊滅しています。

この2度の津波で「ここより下に住むべからず」という石碑が
沿岸の各地に作られた事は、何度も報道されているので、ご存じの方もいるでしょう。

堤防

そこで、町を守る高さ10mの堤防を作りました。
別名、万里の長城と言われた二重の堤防です。
この堤防のおかげで、3度目の高さ6mのチリ地震津波は防ぐ事が出来ました。

これで安全神話が生まれてしまったのか、
人々は便利な港の近くに住み始めたのです。

うちの街では、火災などの避難訓練の他に、津波の避難訓練というのがありました。
津波が来たという想定で、高台へ逃げる訓練です。

それ以後、住んでいる間に、何度も津波の警報は流れましたが、
実際の津波は、高くても1m前後。
避難訓練はしましたが、津波の警報で実際に避難した事はありません。

こうして、津波の記憶が風化してきた所で、
今回の津波が、その10mの堤防も乗り越え、町は3度目の壊滅をしたのでした。

1年前、震災の起きたとき「想定外」という言葉が逃げ口上のように使われました。
あれから1年。
安全が確保されたとという事で、いろんな事がまた解禁されようとしています。
安全の確保って、何が基準?

4度の津波に襲われた街の出身者として思うのは、
安直な安全神話と震災の教訓の風化、
どうも、同じ過ちがスタートしているように見えて、しょうがないのです。

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