おくりびと

言わずと知れた、第81回アカデミー賞外国語映画賞 、
第32回日本アカデミー賞最優秀作品賞受賞作品。

遺体を清め棺に納める納棺師として働くことになった主人公の成長と
周囲の人々の人間模様を綴る作品。

数多くの賞を取っただけあって、素晴らしい映画でした。
納棺師という耳慣れない設定意外は、芝居もリアルで淡々と。
シンプルなストーリーながら、抑えた山崎努さんと本木雅弘さんの演技が
ジワジワと感動を引き出してくれます。
納棺師の所作も美しい。

こんな素晴らしい作品を今頃になって観て、
しかも喫茶店が舞台だと聞いて観た…というおかしな理由。

そんな変な人の戯言だと思って、ここからは聞き流してください。
石川遼君の、聞き流すだけで英語が学べるスピードラーニングではないので、
記憶する必要もありません。

ストーリーとか演技にひたっていると、
ちょいちょい集中力を欠かせるポイントがこの映画にはありました。
マニアックな人の視点という事で、許してください。
そして、公開後しばらくたちますが、ネタバレも含まれているのでご注意ください。

主人公はオーケストラの解散でチェロの道をあきらめて田舎に帰ってきた男。
実家は、母親が遺してくれたスナック兼住居ですが、
父親が愛人と逃げる前は、クラシックを中心とした名曲喫茶だったという設定。
クラシック好きの親がいて、そこからチェロの道へ進んだ主人公。

ここで最初のひっかかりポイント。
なんでクラシックなのに、スピーカーがJBLなの?

一般的なベタなイメージでいえば、JBLはJAZZ向きのスピーカーで、
クラシックならタンノイとか、他のイメージ。
もちろんJBLでクラシックを聴いてもいいし、
タンノイに異論のある人もいると思うけど、
観たときに、「わかりやすい」ぐらいにはなると思うのです。

まあ、JAZZもクラシックも好きだったお父さんに違いない。
だからJBLにしたんだと頭を切り換えて観ていると、またもや、ひっかかりポイントが。

父親は愛人を作って家を出て、母親はスナックをやりなが女で一つで息子を育てた。
でも、母親は最後まで父親の事が好きだったらしく、
父親揃えたレコードは全て残してある。

となると、オーディオシステムも父親が残した物となるのだろうけど、
例のJBLが、映画公開当時最新式の型番な訳ですよ。
まあ説明もないので、本木さんが新たに買い足したという逃げ道もある。
ただ!チェロを弾いてるシーンから、子供の頃の回想シーンに展開するのだけど、
他のインテリアや小物が、さらにタイムスリップして古めかしくなるのに、
スピーカーだけは同じ最新式の4318だよね。
時代考証的に、どうしても合わない。

納棺師物じゃなく推理物だったら、最後に船越英一郎さんが崖の上で、
「騙したつもりだろうけど、オヤジさんから貰ったというスピーカー。
 あの時代には製造されてなかったんだよ」
と言わざるを得ない感じなのです。

ここまで来たのでついでに言うと「お父さんの好きだったレコード」をかける
プレーヤーは、クラブなどで使われるテクニクスの物だと思う。
ヒップホップのDJ用ですよ。
間違ってたらごめんなさい。

まあまあ、映画なんだし、そこまで気にしなくてもいいじゃない。
…と自分も思い込もうとしたのですが、
最後まで観れば、父から子へのメッセージ、子供に残した物というのが、
最大のテーマではないですか!
しかも、それをつなぐ物が音楽。

だったら、やっぱり父の時代に一世を風靡した古いスピーカーやオーディオシステムで、
父の好きだったレコードを聞いて欲しかった。
と、マニアックな視点でいうとそう思った訳です。

映画賞総なめのこの映画、
日本アカデミー賞では、美術賞も受賞しています。
審査するときに時代考証が間違っていると
異論を唱える人はいなかったんでしょうか?
まあ映画界的には、そういう所は、気にするポイントじゃないんでしょうね。

でも気になる。
てな訳で「おくりびと」+「JBL」とかで検索してみると、
オーディオマニア達が同じような違和感を訴えていました。

だよね!

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ボンナ(本郷三丁目)

ボンナ

今流行りのカフェに共通するキーワードは「ミッドセンチュリー」。
ミッドセンチュリーとは直訳すると世紀の半ばで、
20世紀の半ば、1940年代から60年に作られた家具の事。
当時作られた物は、長い間使えるロングライフデザインな物が多く、
レトロな雰囲気を醸し出しながら、非常にシンプルで機能的な物が多いのが特徴です。

レトロモダンなんて呼ばれる事もあったりするのですが、
東京大学の目の前にある「ボンナ」も、そんな言葉の似合うお店です。

ボンナとはラテン語で「知性」。
やはり東大前のお店って感じですね。

ステッカー

本郷界隈は、古い歴史をもつ喫茶店が多いのですが、
こちらも、倉本聰さんが東大時代に通ったとか、
丹下健三さんや、黒川紀章さんも通ったとか、
大御所達が学生時代に通ったといわれるだけあって、歴史は長いハズなのに、
窓にはフリーでWi-Fiを使える事を知らせるステッカーが貼られていたりして、
パソコンやiphoneなどを使う人達にとって嬉しいお店だったりします。
古さと新しさが、何事もなかったかのように共存しているのです。

店内

店内もミッドセンチュリーな感じ。

カフェの定番でソファーであるカリモクは、
ナガオカケンメイさんが見いだすまでは、
自衛隊や中小企業の応接室からしか注文のない、古いイメージの家具だったのですが、
60年代にデザインされた物にスポットをあてる「60VISION」で注目されてからは
レトロ風味でありながら変わらぬデザインを持つこれらの物が、オシャレという
新しい価値観に。

そんなナガオカケンメイさんの考えにのったお店が多いのですが、
こちらは、そんなブームが起きる前からこんな感じで作られ、
お店自体がミッドセンチュリー。

なんか横浜のニューグラウンドホテルとか、お茶の水の山の上ホテルとか、
そんなクラシックホテルにありそうなラウンジです。

店内

そのせいか、この付近の歴史ある喫茶店は年配客が多いのに対し、
こちらのボンナは若いカップルや女性客が多かったりもします。

コーヒー

コーヒーは350円。

平日のお昼ぐらいは、東大関係者やビジネスマンなどで混み合うらしいのですが、
行ったのは土曜日だったので、ゆったりとした空気が流れていました。
ソファーに身を任せて、のんびりと。

民芸品

かなりインテリアにはこだわって作られたお店なのに、
なぜか店内には、どこの国かわからないような、不思議なデザインの民芸品が。
店内と民芸品は、木の質感としては統一感はあるのですが、
デザイン的には、ミスマッチという感じ。

聞いてみると「家内の趣味なんで、どこの物かわからないです」…と。

うちでも実家を建て直した時に、父親がサイドボードを作ったのですが、
たぶん洋酒などを並べるつもりであったろう場所に、
お婆ちゃんや母親の作った手芸品が並べられ、
オシャレになるハズだったインテリアが、一瞬にして田舎の家に。
その時に、父親がなんとなくムッとしていたような気がします。

これだけ先見の明とセンスのあるご主人ですから、
インテリアには人一倍こだわりはあったでしょうが、
その中に奥様の民芸品を並べるという所に、器の大きさと愛を感じます。

そう、愛が漂う喫茶店なのです。

■ボンナ
■東京都文京区本郷6-17-8
■営業:9:00〜19:00
■定休日:日、祝
場所はこのへん
お店のサイト

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