人間国宝展(東京国立博物館)

東京国利博物館

東京国利博物館で、
クリーブランド美術館展と同時開催されているのが、
「人間国宝展―生み出された美、伝えゆくわざ―」

チケット

どちらの展覧会も単独だと1000円なのですが、
共通チケットを買うと1600円とお得なので、こちらも観ることに。

つまり、どちらかというとついでに観た感じだったのですが、コレが良かった!

人間国宝っていうと伝統を守る保守的な人間かと思い込んでいたのですが、
技を吸収した上で、現代へと変化させる革新的な人達でした。

「人間国宝」は、現代にも続く伝統の「わざ」の継承者であると同時に、
その工芸の発展に尽力し、新たな作品と技を生み出して来ました。

正倉院などに収蔵されている国宝の技法を元に、
現代のエッセンスを加えて新たに作り上げられたもの。
それが並べられて、比較で展示されているのが、すごいわかりやすい。
ピンクの台座に展示されているのが、元になった国宝。
そしてブルーの台座に展示されているのが、
それを元に、現代の人間国宝が作った作品。

そして、工芸品は芸術であると同時に、使われる事を考えたれた逸品です。

銘広沢

こちらは茶の湯が盛んだった桃山時代を代表する志野の名碗「広沢」。
柔らかな白と、緋色と呼ばれる赤みが独特の魅力を生み出しています。

志野茶碗

桃山時代のの茶碗は多くの作家を魅了し、
それに挑み、学び、新たな創作を生み出しています。

下は、志野の技を究めた荒川豊蔵の作品。
漫画「美味しんぼ」の海原遊山のモデルとなった北大路魯山人と出会い、
漫画でいうところの美食倶楽部「星岡茶寮」で使う器作りにいそしんだ人。
古志野を研究し、荒川志野という自分の世界を作り上げていった人でもあります。

…というのは、新たな勉強した情報ですが、
こんな感じで、昔の宝物を研究し、その技術を分析し、
さらに、そこに現代の技をプラスして、新たな物を作り上げてきたのが人間国宝。

たとえば、染色であれば、天然染料に加えて、
化学染料を使ってこれまで出来なかった世界を作り出すとか。
僕のような凡人だと、伝統を守るというと、
当時の物以外は邪道とかとらえてしまうけれど、
そうじゃなく、必ずみんなプラス1以上の事をしてきています。

その伝統を研究しつくした上で、そこに自由がある事が、ホント目から鱗でした。

何かにインスパイアされて、今新しい物を作り上げたいと思っている人
人間国宝達のアイディアが非常に参考になる展示会だと思います。

個人的には、人間国宝の染色家が作った浴衣が凄く良かったです。
浴衣というと、非常に庶民的な物のイメージ。
だから遠くから観ると、人間国宝の作った作品も、着物や友禅と違って、
なんとなーく庶民的な雰囲気がします。

ところが、近くによって細部までみると、
人間国宝の技がふんだんに使われていて、芸術的な染め物な訳ですよ。

どう例えたらいいのだろう?
んー、庶民的な鯛焼きという物を、
人間国宝が、最高級の素材と料理の技を全て駆使して、
茶道の名人が認める茶菓子に作り上げた…みたいな。

あれを観ると、自分たちが作ったり、書いたりするものも、
まだまだ良くする方法あるのに、考えが足らない…。
それを思い知らされたような気がしました。

クリエーター的なお仕事に就かれている方は、観て損がない展示会です。
個人的には、クリーブランド美術館展より、こちらにショックを受けました。

人間国宝の徳田八十吉の作品がアマゾンで売られてる(((;゚Д゚)))ガクブル。
しかも人間国宝の作った陶器に入った、サントリーの響が、
10万円引きとえばいえ、94万円…。

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クリーブランド美術館展(東京国立博物館)

クリーブランド美術館展

全米屈指の規模と質を誇るクリーブランド美術館では、
昨年、新たに日本ギャラリーが開設されました。
そのコレクションから、平安から明治に至る選りすぐりの日本絵画を紹介する展覧会。

「神・仏・人」「花鳥風月」「物語世界」「山水」の
4つのテーマで展示してあります

今回は割と出展している点数が少なめ。

雷神

「伊年」の雷神図屏風
俵屋宗達は、江戸時代初期の画家。号は「伊年」。

自然は豊かな恵みをもたらすと同時に、天災を引き起こす恐れの対象。
そこに宿る神仏を描いたものが多いのですが、
表情はどこかユーモラスな物が多い印象。

子供の頃「雷様におへそとられるぞ」とか、
恐れの対象を、面白おかしく話してたり、そういうのに通じるような。

竜

虎

『竜虎図屏風』 雪村周継

虎が漫画に出てくる猫のように、可愛らしく描かれています。
竜虎といえば、本来なら厳しくにらみ合う絵が多いのですが、
恐ろしさとかだけでなく、ユーモラスに。

この頃の作品は擬人化された物も多く、どこか漫画的要素もあります。

燕子花屏風

さて、今回も絵の知識がないもので、音声ガイドを頼りに見ていきます。
すると「燕子花図屏風の前で音声が
「男女の憂いを表現した絵」と解説しはじめました。

え?どこが?男女?
花の絵でしょ?

音声ガイドは続けます。
「伊勢物語」の第九段「東下り」を題材とした作品で、
男女の思いのもの悲しさが表されているとの事。

「燕子花図屏風」といえば、尾形光琳が有名ですが、
こちらは、その光琳を慕った渡辺始興の代表作。
尾形光琳の「燕子花図」は5千円札の裏側にも描かれているアレです。

これのどこがもの悲しいの?
まず、伊勢物語をよく覚えていないので、第九段「東下り」がわからない。
そこで、家に帰ってから、いろいろ調べてみました。

第九段「東下り」を要約すると…。

自分をつまらない人間だと思い込んで、
「京都には住むまい、東国の方に住める所をさがしに行こう」と思って旅に出た男。
三河の国の八橋という所で、一休み。
その沢にかきつばたの花がたいそう美しく咲いていた。
旅の友から、『かきつばた』の五文字を、それぞれ句の頭において、
旅の風情を歌に詠みなさいと言われて、詠んだのが次の歌。

唐衣きつゝ馴にしつましあれば
はるばる来ぬる旅をしぞ思ふ。

(唐衣を着続けていると柔らかくなって身になじむようになった。
 それと同じに、いつも身近にいて親しく思う妻が都に住んでいるので、
 その都をあとにはるばるやって来た旅路をしみじみと思う。)

一行は、その歌を聞いて皆胸がいっぱいになって、
乾飯の上に涙を落とし、乾飯がふやけてしまった。

尾形光琳の「燕子花図」も、このシーンを描いたものだから、
5千円札の裏側にはそんな物語があったんですね。
知らなかった…。

俺って何にも知らないんだなあ。
美術館めぐりをして、自分の教養のなさに(((;゚Д゚)))ガクブルですわ。

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