オルセー美術館展・国立新美術館

国立新美術館

念願のオルセー美術館展に、国立新美術館に行ってきました。
10月20日、残り一ヶ月を切っていますので、まだの方はお早めに。

国立新美術館は、火曜日が休館日。
通常、美術館や博物館は月曜なんですが、火曜日なのでお間違えなく!

自転車置き場

自転車置き場はチケット売り場の裏手にあります。
こうしてみると、チャリカフェならぬチャリミュージアムの方も結構います。
23区なら美術館もコンサートも、お買い物も、自転車でさーっと行けます。
ぜひ、1度試してみてください。

ポスター

さて、オルセー美術館展。
マネで始まり、マネに終わる9章の構成になっています。

笛を吹く少年

マネは、当時のフランス美術界で唯一の発表の場であったサロンで
新しい手法で物議を醸し出しながらも、
その新しさから保守派に認められなかった人です。

この作品「笛を吹く少年」もジャポニスムの影響を受け、
浮世絵の手法を取り入れて、平面的な絵の具の塗り方をする事で、
無地の背景に、人を際立たせています。

ところが、その手法が古典的なサロンから酷評され
「貸衣装屋の看板のようだ」と言われました。

同様に新しさを追求するモネやルノワールは、
サロン以外の発表の場を自分たちで作る事になります。
それが、後の印象派展。

しかし、マネは何度も誘われても、印象派展には出展せず、
保守的なサロンに認めさせる事に心血を注ぎました。

保守的な物に対する、二つの違うアプローチ、ぐっと来ます。

晩鐘

2章の「レアリスムの諸相」で目をひいたのが、ミレーの名作「晩鐘」
もっと大きな作品だと思ったのですが、実は、割と小さめの作品。
なので、よくみようとこの絵の前は大混雑でした。

裸婦と犬

音楽ではパンクロックが、
それまでの価値観を壊して新しいジャンルを切り開いたように
アートの世界でも、しばしば物議を醸し出す挑戦が行われます。

クールベの「裸婦と犬」

それまで絵画のおいての裸体とはビーナスのように、
神秘性のある物を、美しく描くというのが常識だったのですが、
リアリズムを徹底したクールベは、
この作品で、大きなお尻から太ももにかけて、
女性の身体にたっぷりとついた脂肪や、
黒く汚れた足の裏など、リアルに、その裸体を描いています。

ところが、こんなのは裸体の描き方として認められないと、
サロンや保守派に酷評される訳です。

これをみたときに、何となく写真家のアラーキー事、
荒木経惟さんを思い浮かべました。

篠山紀信さんが、女性を、いかにも綺麗という風に撮る事が多いのに対し、
どこか生々しい作品が多い荒木さん。
場末のラブホテルやアパートで、崩れた中年女性の裸を撮ったヌード写真など
綺麗というよりは猥雑。

でも、綺麗に取ったアイドルや女優の写真が無機質なのに対し、
なにかその裏に隠されているストーリーが見えるような作品。

昔はアラーキーの写真苦手だったんだけど、
最近になって、なんとなく良さがわかるようになってきました。

洪水の中の小舟

こちらは、シスレーの中の「洪水の中の小舟」
これに目が止まったのは、雲の形。

自転車乗りは、雲の形で天気や季節を感じる事が多いのですが、
この雲は最初、秋に多い通称「ひつじ雲」と呼ばれる高積雲かな?と思いました。
庭の木々は枯れているし、船に乗っている人は長袖だし、秋でしょ。

ただ、雲の丸み。
ちょうど建物の上にあるある雲は、
暑い日じゃないと出ないような、雲の形なんですよね。
窓も開け放たれているし、暖かいのか?

と、絵から気温を感じながら眺めていました。

死の床のカミーユ

今回、一番衝撃的だったのは、モネの「死の床のカミーユ」。

最初の奧さんを亡くし、愛する人が死体へと変わって行く課程の、
姿や色の変化を描いた物。
モネは、なんて事をしているんだと自責の念にかられながらも、
描かざるを得ない、画家の性も自覚したと言います。

そんなモネに看取られながらも、
「ダメな旦那だったけど、最後まであなたらしい…」と、
微笑みを浮かべているようにも見えます。

心にずしんと来る一枚でした。

アスパラガス

出口付近には、円熟期のマネの作品が展示されています。
その中で、面白い作品を一つ紹介します。
マネの「アスパラガス」

マネは、「一束のアスパラガス」という作品を、
ある人物に800フランで売ります。
ところがその絵を大変気に入った男は、
約束のお金よりも多い1000フランを送って来ました。

そこでマネは、1本のアスパラガスを描いて、
「先日お送りしたアスパラガスの束から1本抜け落ちていました」
というメッセージを添えて、この絵を贈ったのだそうです。

なんと粋な話しではないですか。
マネって意固地なイメージがったけど、お茶目な一面もあるんですね。

ところで、モネは知っているけど、マネはあまりピンと来ていない自分に
マネってどういう作品を描くの?と興味を持たせたのが、こちらの本。

ハロプロのアイドル、スマイレージの和田彩花が書いた「乙女の絵画案内」
絵画ヲタクと呼ばれる彼女が、女性の描かれた絵を、
アイドルの視点を交えながら、解説していった本です。

彼女が一番好きな画家が「マネ」で、この本の中でも、
黒の使い方について、熱弁しています。

アイドルに興味が無くても、わかりやすい美術の入門書としても読めます。
なぜ、ここにこういう色の線がひいてあるのか?
この隠された右手には何を持っているのか?
など、絵の前にいろいろなストーリーを想像しているので、
絵を見る際の注目ポイントとしても参考になります。

絵に興味を持っている方、ぜひ読んでみてください。
これまでとはまた違った絵の見方が出ると思いますよ。

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