帰ってきたヒトラー

ポスター

面白いけどヤバイと話題の映画「帰ってきたヒトラー」観てきました。
ちょうどイギリスの国民投票で離脱が決まった日に。
この「離脱」が決まるまでを描いた作品なんじゃないかと思えるほど生々しい作品。

風刺であり、コメディーなので、最初はクスクス笑って観ているのですが、
徐々に色んな事とオーバーラップして、笑えなくなっていきます。

現代にタイムスリップした独裁者アドルフ・ヒトラーは、
モノマネ芸人だと勘違いされて、テレビマンにスカウトされ、
テレビに出るうちに、その力強い扇動力を発揮し
再び民衆の支持を集めてしまう…というストーリー。

ここまで読んだ時点で、ヒトラーを題材としたものを、
面白いとはけしからんと嫌悪感を抱いた人もいると思うのですが、
観ずに言う方が危険です。
風刺ではありますが、

すでに現代ヒトラーは現れていると、警鐘を鳴らす作品だからです。

まず、ハリウッドではなく、ドイツの作品です。

テレビ番組のロケという設定ではあるのですが、
ヒトラーが街に現れたら人々はどんな反応をするのか、
大半を台本なしでゲリラ的に撮影し、リアルを映し出して行きます。

もちろん嫌悪感をあらわにする人達もいるのですが、
コスプレ芸人的な物珍しさで、すぐに自撮りで記念撮影をはじめる若者たち。

若者だけではありません。
ヒトラーが優しい口調で対話形式で話しを聞くと、
生活苦の庶民達が、移民や難民に対する不満を口にします。
なぜ、自分達はこんなに苦労しているのに、
難民は、働きもせずに国から金を貰っているのかと。

ヒトラーが「移民難民を追い出したいか?」と訪ねると、
人々は、次々に同意していきます。

この部分は、ゲリラ撮影のドキュメント方式。
人々は、カメラが回っているのに、口々にヒトラーに不満を訴えているのです。

「右傾化が危ない」という単純な映画でもなく、
現代に現れたヒトラーが、色んな政党をみたうえで、
自分とやり方が似ていると選ぶのが、左派の「緑の党」だったりします。

「民衆の望む政治を実現させよう」というスローガン。
これこそ自分と同じやり方だと、支持者と、話し合うシーンもあります。
現代の左のやり方が、自分に近いという皮肉。

逆に、現代の極右を観てガッカリしたり、
ネットで親衛隊を募集して、賛同して集まったのが、
使えないニートのネトウヨだけだったというシーンも。

右とか左とか、単純な話しでなく、
どちらの中にもヒトラーはいるという事を描いています。

昔は、悪対善という、勧善懲悪な作品が多かったの対し、
最近では、
「スーパーマンvsバットマン」
「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」
と、正義が行きすぎると反発する人達が現れ、
同じ目的なのに、やり方の違いから相手を認められず戦いになる。
自分達が100%正しい、相手が100%間違いと、どちらも思っている。
「ヒーロー対ヒーロー」「正義感対正義感」
という作品が増えています。

この映画は、そんな所も突いているような気がします。

ドイツでヒットした時、「知識層」からは批判の声も上がったそうです。
「こんなこと、起きっこない」。

ドイツで公開されたのが、昨年の秋。
それから半年ちょい、同じく難民問題で苦しむイギリスが、
自国の利を優先させる事を国民投票で選び、EUの離脱派が勝利しました。

アメリカ大統領選の共和党候補で
不法移民排他を主張するドナルド・トランプは
「英国民は自分の国の主権を取り戻した」と祝福しています。

「民衆の望む政治」がスタートしようとしているその日、
この映画を観たのは、とても深い物だったような気がします。
その後、テレビから報道されるニュースは、
映画の続きを観ているようでした。

P.S
この映画、話題が話題を呼び満席状態となっていますので、
行く前にネットで空席チェックしてから行った方がいいです。
僕はネットでチケット買って行きましたが。

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